特集/コラム
「学生に本物を見せることが大切。−学費が日本一高いワケ−」山田学園理事長 名古屋文化短期大学学長 山田 健市さん
学校法人山田学園理事長、名古屋文化短期大学学長。父親の後を継ぐ形で昭和60年4月に山田学園理事長に就任。理事長と学長を兼任し「経営なくして教育は成り立たない。」をモットーに、本来難しいとされている「教育」と「経営」の両面からの大学づくりを行っている。同大学は、3専攻14コース制で、美容・ファッション・調理という一般的な部門だけでなく、ブライダルプロデューサー、ダンス・ミュージカルインストラクター、アナウンサーなど、学生が「自分の好きなことを学び、本当にやりたいことを見つけられる」カリキュラムを用意している。学費が短大の中で高額なことからわかるように、一流の施設や講師から「本物」を学び、感性を育む教育を大切にしている。現在、約170名の企業の第一線で活躍している人が非常勤講師として在籍している。常勤講師と合わせると、約600人の学生に対し、3人に1人の講師が付いて学べる体制をとっている。就職率は、名古屋市内を中心に約95%を達成。
理事長になる前は熱帯魚を売っていた!?大学在学中に開業した「熱帯魚販売店」が大繁盛
−理事長になる前は何をされていたのですか?
大学在学中に熱帯魚の小売店をやりはじめました。中学生の時にグッピーを飼っていたのですが、次から次へ増えていきました。私も魚が好きだから、あれこれ増やしていくのがとても楽しかったのですが、しばらくするとさすがに飼いきれなくなり、名古屋の熱帯魚を扱っている小売商に売りに行きました。でも、当時、熱帯魚愛好家は少なく、小売商も売れないからということで、少ししか引き取ってくれませんでした。大学内の掲示板に「熱帯魚を愛してくれる方、無料で差し上げます」と、看板を出しましたが消化しきれず、どうしようと悩んだ末に、自分で店を出すことにしました。当時は、熱帯魚を飼育するための水槽などがとても高価でしたから、世間には「熱帯魚は高い」という思い込みがありました。その頃の私は、魚も自分で増やした魚だし、儲けよりも熱帯魚の愛好家が増えればいい、という考えだったので、大阪まで行って仕入れてきた水槽を仕入れた値段そのままで売りました。水槽1つが1300円ぐらいでしたが、当時の店頭価格が4000円から5000円ぐらいだったので、かなりの安さです。中日新聞に広告をのせれば、店の前に行列ができましたよ。熱帯魚の小売店に行列ができるのです。店は車の車庫にベニヤを貼っただけの10坪程度の広さでしたけど、1日の売上が多いときで100万円ぐらいありましたね。
父親にどんなに反対されても自分の店の経営が楽しかった
−当時理事長だったお父さんはどう思われていたのですか?
熱帯魚店を初めた時は毎日喧嘩していました。「おまえを魚屋にするために育てたんじゃない!」と、店に入れないように入口に板を打ち付けられたこともありました。そのあと1ヶ月は口を聞かなかったですよ。「長男なんだから、学校やれ!」っていつも怒鳴られていました。でもどんなに反対されても、自分で始めた店の経営がおもしろくて15年ぐらい経営していたのですが、ついにどうしても継がなきゃいけないようになり、店を人に任せて大学に入りました。それが昭和48年のことです。でも生き物は人任せにはできませんね。人に任せた途端に毎月赤字になってしまいました。それでも5、6年やったのですが、ある日「もうやめよう!」と決めて、在庫を半額にして、2日で売り切りました。だから近所で潰れたと言う人は一人もいませんでしたよ。みんなに「儲けてやめた」と言われています。父親には心配をかけましたが、私は理事長になる前に、本当に面白い商売をやらせてもらったと思っています。
−理事長になってまず何をやらなければいけないと思いましたか?
他ではやってないことをやるっていうのが私の主義ですから、大学らしくない大学を作ろうと思いました。当時は机も小学校で使っているような木の机だったので、アメリカの学校で使っているようなコンパクトで跳ね上げ式になっているものにしようと提案しました。そうしたら当時の先生方全員に、それでは授業ができないと反対されました。でも私は「先生、それは考え方次第じゃないですか?この机で授業ができる方法を考えましょう。」と言って、反対を押し切り導入しました。その頃はOHP(透明のシートに書いた文字・図表などを、スクリーン上に拡大して投映する装置。)も普及していたから本とノートを見なくても授業をする方法はありましたからね。それ以外に、洋式トイレもウォシュレットも広間に大理石を貼ることも、全部反対されました。でも「私が全ての責任負うからいい!」と、独断でやってしまいました。知らないことに飛び込んで行く勇気がなければ、何も変えられないですからね。後には反対していた先生方も、「うちの大学は他にはないものがある」と自慢してくれていましたよ。
短大の学費が日本一高い!−本物とは何かを知ることができる大学
−名古屋文化短大は短大の中で学費が1番高いと聞いていますが。
そうですね。でも、とらえ方によっては、高くないと思っています。「たくさんの本物を見ることのできる」短大ですから。なぜ高いかというと学費の内訳に教育充実費というのがありますが、他の学校と比べてそちらがかなり高いからです。でも教育充実費は、各専攻コースでの学外見学、芸術鑑賞など、様々な「本物」に触れるためにどうしても必要なものです。例えば、おもてなしの真髄を学びに京都まで茶道の裏千家家元を訪ねたり、テーブルマナー講座のために、ウェスティンナゴヤキャッスルのシェフを招いてフランス料理を学内のレストランで提供したりね。学生には、本当にいい物を見せるべきだと思っています。人は小さい頃食べた母親のおいしい料理をちゃんと覚えています。また、いいものを間近で見たなら、自分の物として欲しいと思い、手に入れたらそれが似合う人になろうとしますから。
そして授業では、企業の第一線で活躍されている方を非常勤講師として多く採用していることも「本物を見せる」ということに繋がります。企業の現場で働いている人はそのノウハウで食べていかなければいけないし、今日やった事は明日にはもう古いという考えで働いています。そうやって必要にせまられて研究開発された方法には、どんな本を読んで勉強してもかないません。今では、そんな非常勤の先生が約170名もみえます。
そして私は大学の責任者として、よく先生方の授業を見て回ります。教室にノックもしないで入っていきますから。やかましい授業は、遠慮なく「うるさい!!」と叱ります(笑)。さらに新しく採用した先生には、新学期が始まる前に「せっかくいい授業をしてもらっても学生達がうるさかったら意味がない。静かにさせて聞かせて下さい、ノートもとらせて、週に1回提出させてハンコを押してあげて下さい」とお願いをしています。
「スリッパ履きとTシャツ」からの脱却!どこへ行く時もおしゃれをする意識が大切
今年、専攻科の生徒を6泊8日のヨーロッパ研修に招待しました。パリは「ホテルリッツ」、モナコは「ホテルドパリ」・・・どれもツアーではとれない超一流のホテルに泊まりました。食事もランチのフルコースで2万円以上する三つ星レストランなど、すごく素敵なところで頂くことができました。普通に学生旅行で行っていたら、まず入れない場所ばかりだったので、みんなとても喜んでくれました。
ヨーロッパでは、隣の公園に行くときも、お向かいのスーパーへ行くときも、おしゃれをして帽子を被って出掛ける人をよく見かけるのですが、「スリッパ履きとTシャツでいいわ。」という日本人の感覚との違いを、私はヨーロッパに行く度に感じます。日本人がもう少しTPOを考えてファッションに気をつければ、日本の文化の地位は上がると思います。
よく、名古屋ではそうやってドレスアップしていく場所が無い、と言われるけれど、私は「どうぞ、どこへ行くときもおしゃれをしていって下さい。」と言います。マツザカヤや三越に行く時にだけおしゃれをしていくのではなくて、近所のスーパーへ行く時もきれいな格好していけば、目立つでしょう。そうすると、「あの人ステキだなあ。」と、見た人が今度はおしゃれするようになる。生活の中から、そういう文化の刺激をたくさん得て、素敵な人達がどんどん増えていくようになっていって欲しいですね。
好きな事をやる事こそが、大人になった時の自分を支えてくれる
私は熱帯魚が好きだから熱帯魚で商売を始めましたが、朝日が昇るまでよく働きました。1日に2回大阪まで仕入れに走ったこともありました。でもとても楽しかったし、やればやるだけ身になったと思っています。いくら頭を使っても好きでもないものは身になりません。だから私は「自分の好きなことをやりなさい」と、オープンキャンパスでよく言うのです。好きでもないことは、長続きしないし、自分のものにならない。大学を決める時も、親が行けと言ったからとか、友達が行くから、彼氏と同じところに行きたいからって言う子はいっぱいいるけど、それではダメだと言っています。「やりたいことが見つからないなら、まず自分が好きなことをやってみましょう。」と。将来を考えると、不安なこともあるかもしれないけれど、好きなことをやって身に付いたことこそが、今後何かにぶつかった時にまた立ち上がれる大きな要素になるのです。
※ 学費・・・2007年度の実習費、教材費を除く授業料及び施設費等。調べ・出典 「短大受験案内 2008年度用」
聞手:メディアジャパン
代表取締役 宮崎 敬士
校正:梅田 和代
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