
アートプロジェクト「アートサイト名古屋城2025 結構のテクトニクス」が10月11日から、名古屋城で開催される。
同プロジェクトは、名古屋城を地域の新たな「文化創造の場」として開き、創造的に活用することを目指し、2023年に始まった。アーティストが名古屋城の歴史、文化、地理などをリサーチし、ここでしか生まれない鑑賞体験を創出する。
3度目の開催となる今回は、2023年のコンセプトだった「保存」に再び注目。400年続く名古屋城を形成する素材、築城の技術、その長年の継承から学ぶことで、新たな創造を提案する。
キュレーターの服部浩之さんは「素材・構造・技術の関係性を、美学・文化的側面から捉える構造の表現を『テクトニクス』といい、積み上げた礎石の上に木造建築物がのる日本の城郭は、まさに独自のテクトニクスの賜物(たまもの)といえる。善美を尽くして物を作ることを『結構』といい、アーティストの創作活動はまさに結構。絵画や彫刻という形式にとどまらない現代アートの作品には多種多様な素材が用いられ、さまざまな技術が投入され、アーティストたちは歴史化された過去の表現を継承することで新たな作品を生み出してきた。本プロジェクトでは、最善を尽くして制作された芸術作品(結構)の根本的な構造表現の美(テクトニクス)を堪能できる場を生み出したい」と話す。
今回の展示では、アーティストの川田知志さんが名古屋城の御深井丸でインスタレーションを展開。本丸御殿の障壁画で1945(昭和20)年の名古屋空襲で焼失した「壁貼絵」に描かれていたモチーフを、川田さん独自の解釈で描き直し、御深井丸の地形に沿って本丸御殿を1/1(原寸大)スケールで写し取って展開した空間に配置する。本丸御殿を支えている「礎石」に当たる部分は、かつて下御深井御庭で焼かれていた御深井焼に倣った陶板に置換する。
服部さんは「川田さんは、フレスコ画を中心に古典から現代まで様々な描画技法を探求してきたアーティスト。壁貼絵と礎石をたどることで、素材や構造、技術を踏まえた意匠の美しさや文化的な意味に光を当て、本丸御殿を想像の中に立ち上がらせる。9日間という限られた時間の中で、制作プロセス、完成された作品、そこで起こるイベント、そして作品が別の形へと姿を変えるまでを楽しんでほしい」と話す。
期間中、関連イベントとして、「ひろばKEKKO」を開催。川田さんほかの出演するトークイベントやワークショップなどのプログラム、パフォーマンスを行う。御深井丸には、飲み物やオリジナルグッズを販売するショップを設置する。
作品観覧時間は、10時~19時30分(18日・19日は10時~16時30分)。観覧料は500円、中学生以下無料(18日・19日は名古屋まつりのため無料開放)。10月19日まで。