新型コロナウイルスの影響で延期されていたサッカー女子のなでしこリーグ1部・2部が7月18日、約4カ月遅れで開幕した。NGUラブリッジ名古屋(以下、ラブリッジ)が所属するチャレンジリーグEASTも8月22日より開催予定。ホーム・名古屋市港サッカー場にノルディーア北海道を迎えて、リモートマッチで開幕戦を行う。キックオフは15時。
約1カ月後に迫った開幕に向けて、今季よりチームを率いる磯村健監督、新キャプテンの高島瑠里子選手、今季よりエースナンバーを背負う三浦桃選手に意気込みを聞いた。
—磯村監督は名古屋グランパス(以下、グランパス)で長年にわたりスクールやアカデミーのコーチを務められましたが、実はそれ以前は女子チームを指導されていたのですね。
グランパスに20年いたので、女子の指導は21年ぶりです。(シロキFCセレーナのコーチに就任した1990年)当時は、なでしこリーグの前身の日本女子サッカーリーグができたころで、なでしこジャパンの高倉麻子監督が現役で、そのうちに澤穂希さんが中学3年生で試合に出るようになって…。この間練習試合をしたスペランツァ大阪高槻の種田佳織監督はまだ高校生でしたね。
—ラブリッジの監督に就任した経緯を教えてください。
シロキFCが解散した時(1998年)、もう少し選手を育てる勉強をするためには育成年代の指導を経験した方がいいのではないかと考え、グランパスにお世話になりました。ゆくゆくはもう少し上のカテゴリーをと考えながら、いろいろなことを学んできたのですが、グランパスで指導を始めて20年がたち、これまでの経験を生かしてもう一度チャレンジしてみたいという気持ちが沸いてきました。さまざまな可能性を模索する中で、ラブリッジとのご縁がありました。(出身地の)千葉県から愛知県に来て丸30年になり、今では愛知の方が地元という感じになってきているので、愛知で頑張りたいという気持ちもあり、それも決断の後押しになりました。
—久しぶりの女子選手の指導はいかがですか。
選手はとにかくみんな真っすぐで、すごく真剣で、サッカーを楽しんでいる。雰囲気はとても良いですね。基礎技術も高いのですが、ボールを「止める」「蹴る」ということがうまくても、状況に合わせて技術を選択するという部分については、まだまだ伸ばしていかなければならない。そういう意味でも伸びしろは非常にありますし、やりがいを感じています。どこまで変化を起こせるか。それは自分自身の挑戦でもあり、選手たちもチャレンジしてくれているので、いい風に変わっていけば面白いチームになると思います。
—練習では「見る」「判断する」ということを強調されていました。
まずは選手一人一人が自分の判断でプレーできるようになることを追求していきたいです。自分たちのベースとなるスタイルをしっかりと共有しながら、選手自身がゲームの中で、相手やボールを奪ったときの状況を見てプレーを変えられるというのが目指すところです。一足飛びにはチームとしての判断ができるようにはならないので、少し時間はかかると思います。まずは個人としての判断のレベルを上げて、次に何人かのグループとしての判断の向上を目指し、最終的にはチームとしての判断ができるように導いていきたいと考えています。
—高島選手をキャプテンに指名した理由、意図を教えてください。
私は昨年までのチームの歴史を分かっていないので、小林真規子コーチと話をしました。昨季のキャプテンの道倉宏子さんがいろいろな意味でカリスマ的なところがあったので、これまで少し遠慮していた子の中から、今年は先頭に立ってやっていこうという選手が出てくるかもしれない。しばらく様子を見た方がいいのではという助言を受けて、3週間ほど何人かの選手でキャプテンを回しながら様子を見ました。その中で(高島)瑠里子に何とか今年のチームを引っ張っていこうという姿勢が見られたので、彼女に決めました。
—最後に、今季の目標をお聞かせください。
目標はチャレンジリーグ優勝と皇后杯のベスト16です。選手主導のチームにしたいので、選手間でどんどん発言をし合うような、活気のあるゲームをしてもらいたいです。自分たちがプレーしていて楽しくて、こういう時期にもかかわらず見に来てくれた方々に本当に楽しんでもらえて、勇気を与えられるようなそういうチームを作っていきたいと思います。
昨季の(昇格を逃した)悔しさをぶつけたいというか、昨季かなわなかったチャレンジリーグ優勝を目標に掲げてやっています。そのためにはEASTで1位になることが必要ですし、自分が真ん中で(優勝トロフィーを)掲げているところを常にイメージしながら、目の前の小さな目標を一つ一つクリアし、最終的に大きな目標をかなえたい。まだまだ課題は山積みですが、練習や練習試合で取り組んでいきたいと思います。
(昨季のキャプテンの)宏さん(道倉宏子)は本当に大きな存在で、私自身の心の支えでもあったのでシーズンが始まるまでは少し不安でしたが、練習をしていくうちに「自分がやらなきゃ」という気持ちの選手も何人か出てきていますので、みんなを巻き込みながら、宏さんとは違うやり方でチームをまとめていきたいです。
見えないところで努力している人もいると思うので、見えている部分だけで判断しないで、一人一人としっかりコミュニケーションを取って、話して、聞いて、伝えて、という部分を大切にしたいと考えています。30人と選手数が多いのですが、全員が同じ方向を向いて選手全員でチームを作り上げていきたいと思います。
昨季は1点の重みを痛感した一年になりました。今季は勝ちにこだわる強い気持ちを持ちながらも、見ている人にまた来たいと思ってもらえるようなプレーをしたいと考えています。私が点を取ればチームを救えると思うので、得点は一番こだわっていきたい部分です。でも、やはりボランチというポジションなので、少し欲張りなんですけど、攻撃も守備も両方頑張りたい。自分たち、ボランチの指示によって周りを動かせるような、そういう存在になりたいです。
磯村監督からは、よく見て、判断して、相手によってプレーを変えるということを要求されます。相手との駆け引きや相手を欺くプレーはサッカーの面白さの一つですし、私自身も「あっ、こういう考え方もあるんだ」とすごく学ぶことが多くて楽しいです。成長できているという実感があります。
昨季は途中加入だったこともあり、自由にプレーさせてもらっていたというか、年上の人たちに頼っていた部分がありました。今年は上の世代の人が抜けてしまったので、一人一人が自覚を持って、みんなでチームを作っていかなければならない。もう一人の副キャプテンの竹林(佑真)と共に、(キャプテンの高島)瑠里子さんをしっかりとサポートしていきたいと思います。