春日井製菓株式会社(本社:愛知県名古屋市、代表取締役社長:春日井大介)は、研究顧問の渡部茂氏(朝日大学歯学部 非常勤講師、明海大学名誉教授)とともに、キシリクリスタルをなめることが口の中の健康にどのような影響を及ぼすかについて、ヒト臨床試験を実施しました。その結果、キシリクリスタルをなめると唾液分泌速度が安静時の約7.8倍となり、口の中の細菌数が減少することが明らかになりました。この研究成果の論文は、国際科学情報誌「Health」に掲載されました。(2025年3月号)
Effects of Candies on Salivary Secretion and Oral Bacterial Counts
Health Vol.17 No.3, March 21, 2025
【高齢になり悩む人が多い口腔乾燥症(ドライマウス)とは】
健康な時はあまり気にすることのない唾液の分泌には、以下のような役割があります。
口腔乾燥症(ドライマウス)とは、慢性的に唾液の量が減り、口やのどが乾燥した状態になる疾患です。口の中が乾燥し舌に潤いがなくなると、以下のような症状が出てきます。特に高齢者で悩む人が多く、日本では推定で約3,000万人(※)のドライマウス患者がいるといわれています(※ドライマウス研究会 https://drymouth-society.jp/)。
【研究の背景】
上記のように口の中の乾燥を緩和するためには、ガムを?筋むことが奨励されていますが、これまでキャンディを使った研究はほとんどありませんでした。そこで口の中の乾燥に悩む人々の健康を守るために、キシリクリスタルがどの程度効果があるかを明らかにするために本研究を実施しました。
【研究方法】
1.被験者の安静時唾液分泌速度とpH、キシリクリスタルを口に含む直前の口の中の舌上の細菌数を測定。
2.キシリクリスタルを1個口に含み、完全に溶解する時間とその間の総唾液量、キシリクリスタル溶解後の舌上の細菌数を測定。
3.続いて2個目のキシリクリスタルを口に含み、同様に測定。
キャンディはキシリクリスタル ミルクミントのど飴(春日井製菓)を用いました。
被験者は健康な成人15名とし、実験前日の就寝前から歯磨きを禁止して行われました。
本研究は朝日大学倫理委員会の承認を得て実施しました。
【研究結果】
◆唾液分泌速度の増加: キシリクリスタルをなめることで唾液分泌速度が安静時の約7.8倍に増加しました。
◆口の中の細菌数の減少: キシリクリスタルにより細菌数は有意に減少し、キシリクリスタル刺激1個で約65%、キシリクリスタル刺激2個で約49%まで減少しました。
【結論】
キシリクリスタルをなめることで唾液分泌が促進され、口の中の細菌数が減少することが確認されました。特に高齢者の口の中の乾燥に悩む人々に対して、キシリクリスタルをなめることが有効な対策となる可能性があります。
1.唾液分泌速度
今回の研究では、キシリクリスタルをなめている時は約30秒ごとに唾液を紙コップに採取しましたが、その間唾液は常に一定量の分泌が確認されました。キシリクリスタルは口腔内でよく動いて位置を変えることから、味覚の順応による唾液分泌の減少は起こらないことによると思われます。
2.口腔内細菌数
安静時唾液分泌速度とキシリクリスタルを溶解する直前の細菌数が正の相関を示したことは意外でしたが、これは、口腔内の唾液は全て嚥下される前には必ず舌背上を流れて嚥下されることから、通過する唾液量が多い人は、舌背上に細菌が付着しやすいことが影響していることが考えられます。
3.高齢者の口腔環境の維持と改善に及ぼす影響について
今回の研究で、キシリクリスタルをなめている間は唾液が増量し、口の中の細菌数が減少することが明らかとなったことから、食事以外の時間に1日3~4回のキシリクリスタルをなめることで、口腔環境の悪化を防止できる可能性が示唆されました。
【今後の展望】
嗜好品としてのキャンディの役割は、リラックス効果、気分転換が主でしたが、これらに加えて、「良好な口腔環境を維持」する機能を活用することは、高齢者に多い口腔乾燥症(ドライマウス)患者に対して有効な対策と思われます。将来的には、唾液分泌を促進する成分をキシリクリスタルに含めることで、本研究で観察された効果がより高まる可能性があります。(春日井製菓商品開発部 スペシャリスト 本田寛幸)