ビジネスホテルチェーン名鉄イン(本社=名古屋市西区)が昨年12月から販売を開始した「鉄道写真が撮影できる」宿泊プランが人気を集めている。
名鉄インは昨年10月、ホテル事業で、京急EXイン(東京都品川区)、西鉄イン(福岡県福岡市)と業務提携した。3社とも鉄道会社系列のホテルで「私鉄系」という共通の基盤を持つ。互いの利用客を融通し、ネットワークの結節を強化しホテルネットワークを目指すのが狙い。
同企画は、提携記念企画として私鉄やJRが客室から望める3社6ホテルで実施。提携後、同じ「私鉄系」のホテルが何かできないかと、鉄道を趣味としている同企画発案者の名鉄不動産(名鉄イン親会社)の岩切さんを筆頭に企画が動き出した。
もともと「西鉄イン天神」(福岡市中央区)が、西日本鉄道天神大牟田線を撮影できる鉄道プランを行っていたが、「面白いという反応はある一方、販売実績はいまひとつと聞いていた」と岩切さん。そうした中、3社が手を組み、鉄道写真撮影プランが決定した背景には、「対象ホテルが東京・愛知・高知・福岡となり、全国感を出せることや、(窓から見える列車が)JR、路面電車、私鉄、貨物列車などバラエティーに富み、話題性も高まることがあった」と岩切さん。「『個』だけでは弱いところを、手を組むことで互いにメリットができた」(岩切さん)という。
販売開始からこれまでの反響は、発売当時パノラマカーが撮影できた「名鉄イン知多半田駅前」=22件、「京急EXイン大森海岸駅前」=50件弱、路面電車が見える「西鉄イン高知はりまや橋」=41件、JR西日本が見える「西鉄イン博多」=約300件など、概ね「好評」(同)。
利用客にはコアな鉄道ファンだけでなく、「立派なカメラを持ち込まなくても、携帯などで手軽に写真を撮れる時代のため、どうせ泊まるのであれば鉄道が見える方がいい」といった、「鉄道に興味がある程度の人」も多いという。鉄道が見えるということは、駅近くだということを間接的にアピールできることでもあるという。
岩切さんは「ウェブがあったからこそできた企画。大きなメディアに取り上げてもらうには細かすぎるネタで、ターゲットも狭い。一般の人に向けても反響が薄いのは目に見えていたので、最初は、鉄道専門雑誌にしかリリースしなかった。そのうちブログに書かれるなどで広まり、一般紙にも数件掲載され、さらに話題が広がった。予約もウェブでできるのでスムーズ」。
名鉄インでは、「名鉄イン刈谷」で名古屋鉄道三河線、JR東海東海道本線を望む「鉄道鑑賞プラン」(6,500円)、「名鉄イン知多半田駅前」で名古屋鉄道河和線を望む「鉄道ファン必見!名鉄電車撮影プラン」(5,400円)を提供。窓が開く方向の指定ができ、さらに知多半田駅前では、客室の階数も希望できる。「写真を撮る名所のようなところではないが、その土地を感じられる街並みを背景に、そこで見える鉄道を写真に収めることもできる。例えば名鉄イン刈谷だと、デンソー本社を背景にできる」(同)。
「今回の企画はステップのひとつだと考えている。今後一般のお客様にも響くようなプランを考えていきたい」(同)とも。