オール名古屋ロケの日韓合作映画「デッドエンドの思い出」が2月2日から、名駅の映画館「シネマスコーレ」(名古屋市中村区椿町8)で公開される。公開に先立ち出演のチェ・スヨンさん、BOYS AND MEN田中俊介さん、チェ・ヒョンヨン監督らが会見を開いた。
同映画は吉本ばななさんの同名小説が原作。名古屋に赴任した婚約者が別の女性と一緒に暮らしていることを知って恋に破れた女性が、喫茶店で出会う男性ら街の人々の優しさに触れ、立ち直っていく姿を描くドラマ。初めて訪れた名古屋で失恋し、途方に暮れる主人公ユミをアイドルグループ「少女時代」や女優で活躍するスヨンさん、喫茶店を営む男性・西山を田中さんが演じる。円頓寺商店街、久屋大通公園、長久手の古戦場など、名古屋市内、愛知県内の各地で撮影を行った。
2010年に「あいち国際女性映画祭」に招待されて名古屋を訪れたチェ・ヒョンヨン監督。「映画祭でワークショップ企画があり、名古屋のいろいろな場所をロケハンした。名古屋は大きな街なのに人々が温かい印象がある。当時を思い出し、あの店は残っているのか、街の雰囲気はそのままかなど、スタッフに相談しながらシナリオを書き上げた」と話す。
スヨンさんは役作りについて「シナリオを読んで、韓国から名古屋まで来るユミは、原作よりもう少し行動力があるキャラクターに感じられたので、今の女性らしく演じることを意識した。誰かのおかげで回復するのではなく、自分の力で立ち直ることができる女性、自分が感じた痛みを受け止めながら、ゆっくりと成長できる女性にしたかった」と振り返る。田中さんは「僕は名古屋出身なので、韓国から来るキャストやスタッフをおもてなししたい、この街をすてきな所だと感じてもらいたいという思いがあった。撮影現場ではいつも無口な自分が、今回は周りのスタッフにどんどん話しかけた。皆と一緒作り上げた温かい空気が、西山に乗っかってスクリーンから放たれていればうれしい」と話す。
名古屋の印象についてスヨンさんは「少女時代のツアーで何度も来ていて、旅行で訪れたこともある街。ひつまぶしが好きなことはファンに知られているが、今回食べた味噌カツもとてもおいしかった。皆が親切で、いい思い出を作ることができた」と笑顔。田中さんは「今回の撮影で、名古屋の良さをあらためて発見できた。例えば久屋大通公園は、都会の真ん中に自然があり、テレビ塔がそびえ立っている美しい風景。ずっと住んでいながら、当たり前にある景色を見落としていた」と話す。
共同制作のシネマスコーレやなごや・ロケーション・ナビ、愛知フィルムコミッションが力を合わせて完成させた合作映画。監督は「名古屋のスタッフの努力で、ロケ地選びほか、諦めた部分は一つもなかった。舞台となる店内も希望通りの色や空間を実現してもらい、魅力的なシーンを作ることができた。原作を読んだ人にも、若い世代の観客にも、登場人物の感情の流れが伝わる映画になるように取り組んだ」と自信を見せる。
プロデューサーのイ・ウンギョンさんは、原作の吉本さんの大ファン。「予算など大変だったが、スタッフもキャストも運の良さと縁に恵まれて完成した作品。若い監督やスタッフが作った分、原作の持つメッセージが若い世代にも伝わりやすい映画になった。監督との対談で、吉本さんが映画を喜んでくれたことも本当にうれしかった。この運が映画の成績までつながってくれることを祈っている」と成功を願う。
シネマスコーレ支配人でプロデューサーの木全純治さんは「先行公開する名古屋でまず大ヒットさせて、全国公開に行きたい。すでにかなりの館数での公開が決まっている。シネマスコーレ35年の興行成績の歴代ベスト3に入るよう、頑張りたい」と意気込む。
名古屋での先行公開後、2月16日から全国で順次公開する。