1本の韓国ビデオから生まれたドキュメンタリー映画-名駅西の映画館で上映

「あんにょん由美香」のフライヤーを手に、松江哲明監督

「あんにょん由美香」のフライヤーを手に、松江哲明監督

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 名駅西の映画館シネマスコーレ(名古屋市中村区椿町、TEL 052-452-6036)は9月5日から、1本の韓国のビデオ作品の発見をきっかけに作られたドキュメンタリー映画「あんにょん由美香」を公開する。

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 同作品の監督はドキュメンタリー監督の松江哲明監督。日本映画学校でドキュメンタリー映画の面白さに出会ったという松江監督。卒業制作では、自身が在日コリアン三世であることから在日コリアンをテーマにしたドキュメンタリー「あんにょんキムチ」を制作した。この制作をきっかけに20歳で初めての在日コリアンのことについて調べ、初めて祖父や両親にインタビュー。「今まで触れてこなかった在日コリアンのことは、映画を作る目的や、カメラがあるからできたことだと思う。ドキュメンタリーはその過程が映画になるもの」と松江監督。

 出演はAV女優の林由美香さん。「全力で仕上げるような、仕事に対して手を抜かない人。安心して任せられる、監督からも共演者からも信頼され、愛される人だった」(松江監督)。そんな由美香さんは、2005年に突然この世を去った。

 松江監督にとって由美香さんはあこがれの女優。学生時代に手がけたAVをテーマにした作品を由美香さんに見てもらったことがあったという。そのときに言われた言葉は「松江くん、まだまだね」(同)だった。「これがスタートだったので、次良くなければ『松江くん、ダメね』と言われるだろうと思って…。イベントや酒の席で一緒だったことも多いが、オファーはできなかった。いつか出演してくださいと言えるようになる前に、由美香さんはこの世からいなくなってしまった」。

 その由美香さんが出演した1本の韓国のアダルトビデオ作品「東京人妻 純子」に出会ったことをきっかけに、「あんにょん由美香」の制作が始まった。「東京人妻 純子」の劇中では、なぜか韓国人が片言の日本語を話し演技をしているほか、間違った日本描写も。「笑っちゃいけないと思いながらも、おなかが痛くなるほど笑っちゃう。その中で、いつも通りまじめに演技に取り組んでいる由美香さんが映っている」。

 なぜ由美香さんがこの作品に出たんだろうという思いを持った松江監督は、由美香さんの代表作を撮った3人の監督に接触し、一緒に当時の撮影現場を訪れ由美香さんの姿を追っていく。「インタビューするだけではなく、現場に足を運び、思い出す表情や、作品と同じアングルでカメラを回してみたりして、現場で体感したかった」。

 また、「東京人妻 純子」を撮影した監督・スタッフをたどり韓国まで足を運んだ。作品制作の経緯や由美香さんの魅力をインタビューした後、監督、俳優、スタッフに「もう一度撮ってみませんか」と誘いかけた。そうして、由美香さんをテーマにした新しい物語が作られた。「きっかけはこう(亡くなったこと)だったけど、もう会わなかった人たちがまた集まり、新しい物語を撮れたことがうれしい」。「由美香さんを知らない人にも見てほしい。(見ることで)出会いの映画にしたかった」とも。

 フライヤーには、由美香さんの驚く顔の写真を使った。「この写真を選んだきっかけは、由美香さんに一番驚いてほしかったから。『わたし死んじゃったのに、なんで映画に出ているの?』と言ってもらえるように」と松江監督。

 公開は9月25日まで。公開記念で、「林由美香×松江哲明監督特集」(8月29日~9月4日)として、「あんにょんキムチ」「カレーライスの女たち」(9月3日)、「童貞。をプロデュース」「とにかく金がないTV」「ライク・ア・ローリング・ストーン」(同4日)など松江監督の作品を上映する。

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