トヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ」)は、伝統工芸品に自動車廃材を取り込み、新たな価値を創造することで地域への貢献を目指す活動として、鉄廃材を原材料に、山形鋳物の伝統的な技術・技法を活用した急須・冷酒器を、日本最古の山形鋳物工房である菊地保寿堂(山形県山形市)と共に製作しました。
トヨタ構造デザインスタジオでは、従来のクルマづくりの軸である経済軸(安くて作りやすい)、技術軸(軽くて高性能)という2つの価値観に、環境軸(地球環境から考える)という概念を追加することで「捨てるところのないモノづくり」の実現を目指しています。そのために、クルマづくりだけでなく、その終わり方(廃棄)まで考え、さらには素材選びから考えなおす。そしてリサイクルでクルマに戻すことのできない廃材については、「仲間づくり」を通じ自治体や地域の工芸家、アーティストと共創することで付加価値をつけアップサイクルする「次の命づくり」に取り組んでおり、これらの考え方を「Geological Design(ジオロジカルデザイン)」と称し活動しています。
廃車や製造過程から生まれる鉄廃材は、一般的にはアップサイクルされづらい素材です。この度、Geological Designに共感いただいた菊地保寿堂とともに、伝統工芸との組み合わせによる廃材の価値向上に向けた次の命づくりに取り組み、山形市の伝統産業である山形鋳物の伝統的技法を活用した急須・冷酒器が誕生しました。
トヨタでは今後も、環境にいいクルマづくりに取り組むと共に、地域の伝統的な工芸品・美術品の知名度向上や産業振興等への協力による地域貢献を通じて「町いちばんの会社」を目指してまいります。
■製品紹介
自動車廃材アップサイクル急須・冷酒器
〈製作〉
菊地保寿堂
〈素材〉
外側:自動車の鉄廃材
内側:鋳物ホーロー(世界で最も食品衛生基準が厳しい欧州とドイツの基準を鋳物製品では世界で唯一クリア)
〈塗装〉
外側:焼きつけ塗装 藍色に銀チップ
内側:鋳物ホーロー
〈サイズ〉
高さ 80mm(つまみ込み)×幅 155mm×奥行 100mm/重さ 700g/容量 400cc
〈製品紹介〉
従来と異なる素材のため、鋳造ノウハウをまとめあげることに苦労しましたが、世界で初めて自動車鋳物部品の鉄廃材を再利用した急須・冷酒器を創りあげることができました。形状は天空に舞うひらぐもです。日本を象徴する色として外国からも「ジャパンブルー」と評される藍色を用いました。ミッドナイトブルーにも見紛う深みのある色に星を散りばめ、夜空をイメージできると思います。また形は、雪に覆われた山形の霊峰月山です。新時代へ向けての「新伝統と創造」です。日本茶の急須として、紅茶、中国茶などの茶器としてはもちろん、コーヒードリップ用のポットとして、さらに、燗瓶や冷酒などの酒器としてもご利用いただけます。
〈注意事項〉
・急須として開発されており、お湯を沸かす鉄瓶としての茶器ではありません。直火は避けてください。
・使用条件によりテーブルに輪染みを作る場合がありますので、瓶敷(急須台)のご使用をおすすめします。
■菊地保寿堂15代当主 菊地規泰氏のコメント
自動車の鉄廃材を再利用して、“人の五感に響くような製品づくり”を目指しました。「廃材」と聞くとマイナスなイメージがあります。そのため製品をただ創るのではなく、人や自然に優しい製品にまで創りあげることが重要です。たたら製鉄法から生まれた和銑鋳造法に当社の鋳造精錬法を応用することで、人や自然に優しい製品に創り変えられると確信し苦労のすえに製作しました。これからは、地球や自然に生かされていることへの感謝を込めるようなものづくりが求められると思います。Geological Designの取り組みとプロダクトはまさにこの考えが根底にあり、今後世界から求められる思想哲学になっていくことを期待しています。
〈菊地保寿堂について〉
菊地保寿堂は、「伝統と革新」をフィロソフィーとして、安全ー地球貢献ー感動を生み出す鋳物製品創りを目指して420年鋳物工房を続けています。その技術と精神を現代の生活に開発した彩色ティーポットの開発製作をおこなっており、パリを中心に世界で高い評価を得ています。環境に優しく、人体にも優しい鋳物製品創りを創造し続けています。
https://www.wazuqu.jp/
■トヨタ自動車 構造デザインスタジオ テーマプロデューサー 大學孝一のコメント
420年にわたり山形鋳物を手掛けられてきた菊地保寿堂様の卓越した技術により、自動車廃材の鉄が新たな価値を持つ素晴らしい製品に生まれ変われたことを大変嬉しく思います。本活動が、山形のものづくりや山形鋳物の更なる認知向上など、地域の活性化や産業振興のお役に立てることを願っております。また、今後も、クルマづくりのみならず、職人の皆さまとの共創を通じて、「Geological Design」に取り組む仲間を、業界を問わず増やしていきたいと思います。