イベントを企画・主催したのは、オーガニック料理を提供する「玄米菜食 花小路」(名古屋市中川区荒子町)。店主のYumaさんは、かねてから「中川区にはエコやオーガニックにこだわる店が少なく、理解してくれる人も少ない」と思っており、「お祭りのような楽しいイベントで、自分の好きなものをたくさんの人に知ってもらおうと思った」とイベント発案のきっかけを語る。
会場は店から近い荒子観音寺(中川区荒子町)に交渉。荒子観音寺の本堂には優しい笑顔が特徴の円空仏が1000体以上納められている他、名古屋最古の木造建築で重要文化財に指定されている多宝塔もあり、「お寺の雰囲気がイメージにピッタリだった」(同)。出店者は「知り合いや、その知り合い」に声をかけて募った。名古屋ではオーガニックなどの業界が狭く、「自分でオーガニックのお店に食べに行ったり、そういうお店の人が『花小路』に食べにきてくれたりして知り合った」人がほとんど。
イベントの告知はフライヤーを用意し、出店者に配ってもらったほか、「近くの人に来てほしい」と会場付近の300戸にポスティングを行った。イベントスタッフは、主力メンバー10人とサポートメンバー20人ほどで、「それぞれ仕事の合間に会場の飾りなどの準備を進めていたので大変だった」(同)。
イベント当日は、あいにくの雨だったが、開始の午前10時前から、たくさんの人が会場を訪れた。訪れたのは、20~30代の女性を中心に、カップルや親子連れなど幅広い顔ぶれ。“森ガール”風のナチュラル系ファッションの女性や、民族調の個性的な着こなしの人が目立っていた。
この日出店されたのは、フードや雑貨など30店以上。オーガニックやマクロビオティックのフードから、ヴィーガンスイーツ、有機野菜、フェアトレード雑貨、手作り石けんや布小物、話題の布ナプキンまでこだわりのラインナップが勢ぞろい。「花小路」のように店舗を持っている店ばかりでなく、イベントなどでしかお目にかかれない店も数多く登場した。「人気の店は他のイベントでもすぐに売り切れてしまうから、朝イチで来た」という来場者も。お弁当やカレーなどの食事メニューでも午前中から行列ができ、昼には完売してしまう店もあった。(会場にはたくさんのテント屋台が並んだ。写真=emofさんのお花の屋台)
会場では有料のリユース食器が用意されたが、ほとんどの来場者がマイ食器を持参していた。とくにタッパーは、ふたをすれば洗わずに持ち帰れるため、利用者が多く見られた。購入したスイーツやパンが潰れないようにタッパーに入れるなど、それぞれに使い方を工夫していたようだ。(写真=筆者持参のタッパーに入れてもらった「花小路」のまぜごはん)
本堂前のステージでは、様々なライブが行われた。沖縄ちんどん、ギター、ジャズなど多彩なアーティストたちは、「『花小路』で出演してもらったことのあるアーティストや、旅先で偶然知り合った人など、いろいろな人に声をかけた」(同)。
Yumaさんが以前スタッフとして働いていた、「ブラウンズフィールド」主宰の中島デコさんは、知多半島で自然農を営むChadoさんと、農業やふんどしのことについてトークライブを繰り広げた。スティールパン・バンド「パンソニード」の演奏では、土砂降りの中、観客も一緒に踊るほど盛り上がり、ライブならではの一体感が会場を包んだ。(写真=スティールパン・バンド「パンソニード」)
また、ヘアゴム作りなどのワークショップでは、同じものを作る過程で参加者同士の交流も生まれ、完成したときの喜びもひとしおだったのではないだろうか。(写真=くまのストラップ作りのワークショップに中島デコさんが飛び入り参加)
「商品の売り切れが早かったことは反省点だが、初めてのイベントで、雨だったにもかかわらず、来場者数も会場の盛り上がりも予想以上だった」と話すYumaさん。ほとんどの来場者がマイ食器を持参していたので、ゴミも出なかったという。周辺からの苦情もなく、「お客さんの意識の高さに驚いた」(同)。
投げ銭箱(写真)にはおよそ8万円のカンパが集まったが、「出演者のギャラもあり、5万円の赤字になってしまった」(同)。
オーガニックのイベントは、これまでにも「わらべ村 アースマーケット」があったが、「名古屋の中心から離れた中川区でも、こうしたイベントを成功させられた。スタッフが協力してくれればこれからも続けていきたい」とYumaさんは今後の目標を語る。
大々的な告知をしなかったにもかかわらず「ハッピーナカガワ村」に多くの来場者が訪れたことからは、こうしたオーガニックのイベントを求める潜在人口の多さが読み取れる。
何組かの来場者に、訪れた理由を聞いてみたところ、オーガニックやマクロビオティックの教室などで、このイベントを知ったという人や、出店者の知り合いだという人が多かった。つまりは、すでにオーガニックへの意識が高い人たちだ。
そう考えると、まだまだ名古屋のオーガニックへの認知は、一部の人の間だけなのかもしれない。ただ、そういったオーガニックファンがじつは多くいて、マイ食器持参などのエコ活動が自然に実践された、ということに注目したい。
今後も継続して「ハッピーナカガワ村」が開催され、より多くの人に知られれば、名古屋人のオーガニックやエコに対する意識が高まっていくことに期待が持てそうだ。オーガニックの魅力についてどれだけ言葉を連ねるより、「ハッピーナカガワ村」のあたたかい雰囲気の中でおいしいオーガニックごはんを味わうことの方が、「人に、地球に嬉しい事=楽しい!」を実感させてくれるはず。エコもオーガニックも、シンプルで楽しいものだということを、これからもイベントを通じて伝えて行ってほしい。
10月25日に岐阜県羽島市の「市民の森 羽島公園」で開催される「Happy Mama & Kids ~秋のクラフトマーケット~」は、「誰も無理をしてはいけません」という約束を掲げ、今回が第1回目となるイベント。
「とくにエコやオーガニックにこだわるわけではないが、テーマに合わせたらオーガニックカフェやハンドメイド雑貨などの出店が多くなった」と主催者のはやしさんは語る。「ハッピーナカガワ村」と同様に、マイ箸やマイ食器の持参を呼びかけており、手作り感あふれるイベントになりそうだ。
カフェや雑貨の出店やワークショップ、ステージイベントの他、助産師さんの無料相談コーナーなども登場する。出店者や時間などは変更される場合があるので、ホームページで確認してから出かけよう。