名駅の映画館「シネマスコーレ」(名古屋市中村区椿町8、TEL 052-452-6036)で7月13日、映画「樹海のふたり」の舞台あいさつが行われ、同作に主演したインパルスの板倉俊之さん、堤下敦さんと山口秀矢監督が登壇した。
同作は実話から生まれたヒューマンドラマ。落ちこぼれのテレビディレクター・竹内(板倉さん)と阿部(堤下さん)は、富士山の麓に広がる樹海で自殺しようとする人々を追う番組を企画する。最初は生活のために視聴率を取ることを考えていた2人だったが、取材対象者たちの人生に触れる中で葛藤が大きくなっていく。ビデオカメラのファインダー越しに見えるさまざまな人生から、生きることの希望を描く物語。テレビドキュメンタリーで数々の受賞歴を持つ山口監督の劇映画初監督作品。樹海を取材したディレクターたちの実体験をもとに脚本を書き上げ、自らメガホンを取った。
板倉さんと堤下さんは、インパルスを結成後、数々のステージやテレビ番組で活躍するほか、俳優としても出演作があり、幅広い活動を行っている。本作が映画初主演だ。
拍手の中、観客の前に登場した3人。客席に向け「悲喜こもごも入った作品。楽しんでいただけたなら、うれしいです」と堤下さん。板倉さんが「アルバイトをしながら劇団で稽古を続け、ようやく来た役。うれしいです」と話すと、すぐさま「やってないだろ」と堤下さんが突っ込み、鑑賞直後で緊張感のあった会場に、たちまち笑顔が広がった。
演じた役について堤下さんは「阿部は感情の赴くまま、汚いところも一生懸命なところもある人物で、自分そのまま。竹内に引っ張られながら、いろいろなものを目の当たりにする。喜怒哀楽の激しい役」と話す。板倉さんも「苦しいくらい自分に近かった。自分も視聴率を取ることと、本当にやりたいことの違いに迷うことがある。感情表現をあまりできないところも似ている」と振り返る。監督は「2人は実際にモデルになった人たちによく似ている。役作りはしないでと話し、自然体でやってもらうことを大切にした。スタートをかけないで撮ったこともあった」と撮影時のエピソードを明かした。
劇映画とドキュメンタリーの違いについて監督は「テレビのドキュメンタリーは少数の仕事で、カメラマンとディレクターの2人だけで撮ることもある。映画はたくさんのスタッフがいるので、森の中の撮影は大変だった。ドキュメンタリーにも映画に負けないくらい感動できる映像はあるし、大きな差異はない。今回の映画は、ドキュメンタリー的に撮ったことがポイントだと思う」と話した。
最後に名古屋の映画ファンに向け、「名古屋に来て、皆さんに会えて楽しい時間を過ごすことができた。皆さんの口コミでいろいろな方にお声掛けいただきたい。この映画をかわいがってください」(堤下さん)、「バラエティー番組に出ているので、そのイメージが映画を見て消えたかどうかが気になる。何回見てもいい映画だと思うので、ぜひ見にきてください」(板倉さん)と話し、来場を呼び掛けた。監督は「大きなテーマとして、私たちの心の中にある樹海を描きたかった。人生は樹海のど真ん中にいるようなもの。どこが出口か分からず右往左往している。そこを感じていただけたらうれしい」と作品の魅力を語った。
3人は舞台あいさつの後、映画館の前でサイン会を開催。サインを書きながら来場者の感想に耳を傾け、笑顔で握手に応じていた。