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映画「希望の国」、ミッドランドスクエアシネマで公開-園子温監督が来名

来名した園子温監督

来名した園子温監督

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 名駅の映画館「ミッドランドスクエアシネマ」(名古屋市中村区名駅4、TEL 052-527-8808)ほかで10月20日から、映画「希望の国」が全国公開される。公開に先立ち、園子温監督が来名し会見を開いた。

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 「愛のむきだし」「冷たい熱帯魚」などで国内外から注目を集める園監督が、最新作のテーマに選んだのは原子力発電所。原発事故でばらばらになる家族の痛み、苦しみ、そして絆、希望を描く。多くのメディアが報じたが伝えきれなかったことや、今起きていることをフィクションで描いた映画。舞台は東日本大震災から数年後の日本。のどかで美しい風景の中、酪農を営む小野一家は満ち足りた日々を送っていた。しかし、新たな大地震と、それに続く原発事故は街に暮らす人々の生活を一変させてしまう。

 前作「ヒミズ」を製作中、東日本大震災を目の当たりにした園監督は被災地を訪れ、脚本を書き変えて「3.11以降」を作品に取り込み、同作では真正面から「原子力発電所とともに生きる日本」の姿に挑んだ。前作は津波と原発事故の二つのショックを受けての作品だったが、時間を置き、二つは別に考えるべき問題と感じるようになったという。

「昨年の8月から12月ごろまで、石巻、福島など被災地を取材した。この作品は本を読んだり、部屋の中で考えたりではなく、取材したものだけで作りたかった。登場人物は取材したピースを集積してできた人たちで、せりふやシーンは想像を使って書くことを極力控えた」と園監督。

 震災を扱ったドキュメンタリーも多数ある中、フィクションで描く理由は二つあったという。「ドキュメンタリーは映っているものが本物なので本物らしく見える。でもカメラが回っていると言えないこともある。取材ではカメラを回さずに話を聞き、少しずつ出てくる言葉を拾っていった。被災地の情報ではなく、情緒や情感を記録し描きたかった。もう一つの理由はドキュメンタリーだと過去形で語られてしまうこと。ドラマは時間を戻して体験させることができる」

 さらに、「この映画を2012年に見てもらえるように作りたかった」とも。「なぜ今作るのかと問われることもあったが、なぜ今作らないのかと思う。十年後に総括するように作りたくはなかった。今あること、現在進行形のものを撮ることには、いろいろな葛藤がある。でも被災地の人は忘れられること、風化することが怖いと言っている。撮るなら空想ではなく、徹底的に被災地で撮るしかない。原発事故がなかったら撮らなくてよかった映画で、できれば撮りたくない映画。でもこれからも撮り続けざるを得ない。これで終わりではなく、撮り続ける」

 シナリオを書き始める時点では、結末が希望になるか絶望になるかは分からなかったと監督。「目に見えることは、ほとんど絶望だった。でも被災地の風景を撮っているうちに、明かりをともせばそこに希望があると感じるようになった。最初は皮肉を込めたタイトルになると思ったが、最終的に理屈を超えて希望そのものでいいと思えた」

 監督は「原発がいいか、悪いかを主張する映画ではない。ニュートラルな事実、起きたことのみを描いていて、メッセージ性はない。映画は巨大な質問状。答えを出すのは観客それぞれで、映画は答えを強制してはいない。そこで起きたこと、被災地の悲しみを、考えるのではなく、体験してほしい」と話し、来館を呼び掛けた。

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