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鷲尾友公さん作・円頓寺商店街の壁画解体 制作から4年経て「次に進むとき」

解体前の「MISSING PIECE」

解体前の「MISSING PIECE」

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 円頓寺商店街内(名古屋市西区那古野1)の壁画作品「MISSING PIECE」の解体作業が5月、終了した。

壁画解体を進めていた4月末の様子

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 「長久山 円頓寺」の駐車場横にあった同作品。「あいちトリエンナーレ2019」に際して、愛知県出身のアーティスト・鷲尾友公さんが制作し、会期中には壁画を背景に音楽プログラムが行われた。タイトルの「MISSING PIECE」は「失われた欠片」という意味。肩を寄せ合う4人の人物を中心に、周囲には建築物、雲の浮かぶ空、はためく旗、階段の上に置かれた手、水面に映る太陽のような物体などが描かれていた。会期終了後も商店街のシンボルとして親しまれてきたが、建物老朽化に伴い解体されることとなった。

 円頓寺住職の塩田宝裕さんは「壁画制作の話をもらった当時から、建物の解体は決まっていた。鷲尾さんとトリエンナーレ事務局が『いつかなくなることも含めてアートだ』と解体を了承してくれたため、場所の提供が実現した。私自身も毎朝、お勤め前に本堂の2階から壁画を眺め、この作品から元気をもらっていた。まさに作品名の通り、かけがえのない日常のひとかけらになってくれていたと感じている。作品がなくなるのはとても残念だが、崩壊などの事故が起きてしまう前に、解体に踏み切った」と経緯を語る。

 壁画を別の場所で保存する方法についても協議したが、建物の経年劣化が進んでいるため、壁面だけを取り外して残すのは難しかったという。

 作品について、解体現場を訪れた鷲尾さんは「PIECE(欠片)とは、個々の足りない部分。人間はわがままな生き物で、主張し合うとぶつかるが、一歩引いて分け与えることもできる。人と人が補い合うことを表現した」と振り返った。「会期を終えたと同時に、芸術祭の中での作品の役目は終えた。さらに約4年間、同じ場所で展示され、見る人の心に残ったことで、地域の中での役目も果たされた」とも。

 円頓寺商店街に限らず、各地の屋内外で壁画を制作している鷲尾さん。「次に進むときが来たのだと思う。寂しいが、また描けばいい」と話し、同作品の最後を見守った。

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