名駅の映画館「ミッドランドスクエアシネマ」(名古屋市中村区名駅4)で3月15日、映画「藁の楯 わらのたて」の試写会が行われ、三池崇史監督と主演の大沢たかおさんが舞台あいさつを行った。
同作は木内一裕さんの同名小説が原作。きうちかずひろさん名義で人気漫画「BE-BOP-HIGHSCHOOL」も手掛ける木内さんが、初めて書いた小説として話題となったサスペンスアクション。日本中全ての人間から憎悪される凶悪犯の移送を命じられたSP(セキュリティーポリス)の命がけの戦いを描く。日本を縦断するスケールの大きな移送劇を映画化するのは、「愛と誠」「悪の教典」など話題作を作り続ける三池監督。過酷な任務に挑む主人公をヒットドラマ「JIN-仁-」の大沢さんが演じた。
孫娘を惨殺された日本の財界を牛耳る大物・蜷川(山崎努さん)は、全ての新聞に「この男を殺してください。お礼として10億円をお支払いします」と犯人殺害を依頼した全面広告を掲載する。身の危険を感じた犯人・清丸(藤原竜也さん)は潜伏先から福岡県警に自首する。敏腕SPの銘苅(大沢さん)と白岩(松嶋菜々子さん)は彼を東京に移送する任務に選ばれる。しかし、10億円を狙う人々が次々に清丸の命を狙い始める。
名古屋を中心に東海三県で大規模なロケを行った同作。この日の来名を楽しみにしていたという大沢さんは「この映画は名古屋なくしては成立しなかった作品。名古屋の皆さんと一緒に、この作品を作ったという気持ちでいる」と話す。三池監督も「7割くらいは名古屋で撮影させてもらった。多くの方に協力してもらい、普通はなかなかできないような撮影ができた」と笑顔を見せる。
高速道路や新幹線に加え、空港、留置場、病院などのシーンも本物を借り切って撮影した近年にないスケールの大きな作品。現在は新幹線を映画のロケに使うことはできないが、台湾に日本製のN700系が走っていることを知った監督は、台湾ロケを敢行。緊迫の新幹線でのシーンも描ききった。「普通だったら作品のサイズを縮小するはずだが、原作を読んだ時に、本当はこんな映画を見たい、という挑戦状に思えた。挑戦するしかないという気持ちになり、設定を変えずに台本を書き進めた。SPという逃げるわけにはいかない人たちを扱う映画で、われわれが現実から逃げていたのでは始まらない」と監督。大沢さんは「台本を頂いた時から、すごい挑戦だと感じた。現場でも毎日、本当に規格外のことばかりが起きていた。スタッフ、俳優が監督の気持ちに乗って、みんなで新しいことを成し遂げようと一つになった」と話す。
目を離せないサスペンスアクションでありながら、「許せない人物を、どうして守らなければいけないのか」という重いテーマを問い掛ける同作。監督は「SPと犯罪者の物語と考えると善と悪の話になってしまうので、ジャンル物という考え方を捨てた。SPは訓練されたプロフェッショナルでも、皆と同じ一個の人間。それぞれの生活があり、思っていることも違う。清丸もただの映画上の悪役ではなく、一つの人間、個性として尊重して描いた。たくさんの人間が同時に生きている社会の難しさを普段、われわれは見えないように暮らしている。それをあぶり出せればいいと思った」と作品に込めた思いを語る。大沢さんは「原作などを読んで、正義とそうではないものの対立のイメージを持って現場に入ったが、実際にやってみると、日々、カオスの中に入っていくようだった。ラストシーンを迎えた時には、冒頭のシーンとは全く違う感覚になっていた。法律などで区切っていなければ、善と悪はあやふやなもので、人間は揺らいでいるものだと感じた。その気持ちをそのまま演じた」と振り返る。
最後に大沢さんは「見ていただいた時から作品は皆さんのものになっていく。僕たちの作った子どものようなものなので、一人でも多くの方に見てもらえるとうれしい」と話し、監督は「多くの方に劇場でこの物語に触れていただきたい。エンターテインメントとして楽しんでもらいつつ、いろいろなことを考えていただけたら」と来場を呼び掛けた。
4月26日からミッドランドスクエアシネマほかで全国ロードショー。