各部屋の内装デザインを7組の建築家が手掛けた宿泊施設「セブンストーリーズ」(名古屋市中村区名駅2)が4月17日、名古屋駅近くにオープンした。
企画運営は民泊施設の企画・管理・運営などを手掛ける「ミライブ」(名駅2)。新築マンション1棟を借り上げ、民泊とマンスリーマンションのハイブリッド型施設として同マンションオーナーに提案し採用されたものだという。
8階建てで、2~8階に1部屋ずつ設ける。愛知の魅力を発信することを目的に、工芸や文化などから着想を得たデザインを施す。
旅行が趣味だというミライブの藏満潔社長。「都心部に旅行に行くと宿泊するのはビジネスホテルが多く、子どものいる家族は1部屋に一緒に泊まれない。かといって駅近くの旅館を利用すると高額になる。家族やグループで気軽に使える宿泊施設が欲しかった」と振り返り、1部屋に5人まで宿泊できる仕様にした。新型コロナウイルス感染症拡大の前に企画し、当時からメインターゲットはインバウンドに頼らず日本人に据えていたという。
インキュベーション施設「なごのキャンパス」(西区那古野2)内のシェアオフィスで知り合った、建築会社「matomato」社長で建築士の松田孝平さんに話を持ち掛けた。松田さんが窓口になり4人の若手建築家と松田さん自身も1室を担当。ほか2部屋はコンペを行い上位2社が担当した。「若手建築家はコンペに図面を出すが、それが実際に形になることは少ない。当社は若者の夢を育てるプロジェクトも手掛けていることもあり、若手建築家と一緒に成長していけるような計画にした」(藏満さん)。
部屋の面積は全て44平方メートル。常滑の製陶も手掛ける建築設計事務所が担当した2階は、常滑焼でコバルト釉薬を使った青色のタイルを床面にデザインした部屋。16台の木製ユニットを設置し組み合わせ次第でベッドやテーブル、棚などに活用できる。3階は小牧市の「尾張漆器」の赤色を使い、照明で現れる色の陰影をデザインに落とし込んだ部屋。4階は曲げわっぱなど清須市の「曲げ物」から着想した曲線を描く大きなオリジナル照明が特徴の部屋。
5階は刈谷市の祭り「万燈(まんどん)」をモチーフに作ったカラフルな障子紙や、「外を表現した」として縁側をイメージさせる縁台のようなユニットを置いた。6階は有松のまちをモチーフにし、有松絞りの立体形状をデザインに生かしたテーブルや、地元の祭りのちょうちんの色合いを表現したアートを飾る。家具デザイナーでもある建築家が手掛けた7階はカリモクとコラボした部屋で、オリジナルの木工家具が「リラックス感を与える」という。8階は名古屋市をイメージさせる「金」から金工芸をポイントで使った部屋で、「異なる段差が作り出す空間を楽しめる」ようにした。
各階には階数は表示せず、部屋のタイトルと担当建築家の名前を記す。主な設備はバス・トイレ別、キッチン、冷蔵庫、洗濯機、独立洗面台、アメニティーなど。「食事は近隣の飲食店を利用するほか、食器、調理器具もそろっているので自身で調理、デリバリーなどを楽しんでもらえれば」
宿泊料金は1部屋2万5,000円。利用者は宿泊予約し、チェックイン時間に合わせ1階で受付を済ませる。受付は無人で、テレビ電話を使って非接触で対応する。
民泊以外はマンスリーマンションのほか。イベント利用にも貸し出す。マンスリーマンションの利用は1カ月30万円程度で、イベント利用は要相談。価格は全て税別。
今月29日まで、クラウドファウンディングで協力者を募っている。「リターン」には宿泊券やワークショップ参加券などを用意する。