名古屋の魅力を民俗学の視点で解説する講座「民俗学から見た名古屋入門」が10月25日、名駅西の「Gallery NA2」(名古屋市中村区椿町12)で開催された。
名古屋文化をさまざまな入り口から楽しむイベント「やっとかめ文化祭DOORS」のプログラムの一つ。関西学院大学教授で民俗学者の島村恭則さんと、民俗学の解説動画などを配信するVチューバー諸星めぐるさんが、名古屋の風景写真や古地図、フィールドワークのエピソードなどを紹介しながら、地名の由来や地域独特の慣習などを解説。名古屋文化の個性と面白さを講義した。
テーマは、城下町としての発展とそれ以前の名古屋、名古屋に馬頭観音が多い理由など、受講者の質問も受けながら多彩に展開。約1時間30分にわたり、名古屋ならではの特徴を語り合った。
今回の講座について諸星さんは「名古屋の10代、20代の若者と話すと、世間で名古屋らしさだとイメージされるものや名古屋弁などに齟齬(そご)を感じていたり、逆にそれらのイメージを取り払った時に何が残るのか分からなかったりという声をよく聞く。自分が当たり前だと思って住んでいる所の中にも面白さがあること、他の地域と比較して違いを考えられることなどを、民俗学の観点から知ってもらいたかった」と話す。「同時配信をしながらの講座だったが、会場はもちろん、名古屋に縁があるが来られなかった人、名古屋に興味があって訪れたいと思っている人など、さまざまな人の好奇心に寄り添えるイベントにできた」とも。
諸星さんは書店員Vチューバーとして活動しながら、雑誌「Hukyu」を創刊。創刊号では、Vチューバー文化を民俗学的な視点で特集した。「先入観を持たれ、好きな人たちの限定的な文化という意味では、Vチューバーと名古屋には似た状況があるのかも。インターネット上には皆の好きなものや、さまざまな文化が生まれるが、一つの媒体やサービスが終わってしまうと残らない思い出があまりにも多すぎると感じる。民俗学は、その焦燥感や不安に答えを見つけたり、自分自身やルーツを知ったりするためのツールとして今、注目されてきている。これからも今を記録し、過去を調べ、未来に向けて問う活動をしていきたい」と話す。