現役大学生の靴磨き職人が現在、靴磨き専門店のオープンに向け計画を進めている。
計画を進めるのは北海道出身で現在、日本福祉大学4年生の佐藤我久(がく)さん。2013年12月13日に名古屋駅前で路上靴磨きをスタートさせた。
野球に励んだ高校時代、スパイクを磨くのが好きで友人のスパイクも磨いてあげたところ「とても喜んでもらった」ことを振り返る。履物が好きでアルバイト先も靴販売店。将来について考え始めた大学2年生の秋に、ネットで「靴磨き職人」とういう言葉に出会った。「靴磨きを職業にできるんだ」と興味を抱いた。近くで靴磨きを学べるところが見つからず、独学で技術を習得することに。全国にいる有名な靴磨き職人を訪ねて学んだという。道具を買いそろえたばかりで資金が無かったが、2014年の春休みを活用して2,014円をポケットに入れて全国靴磨きの旅に出掛けた。靴磨きをしながら軍資金を稼ぎ、東京、札幌、仙台、大阪、広島、福岡を回ったという。
靴磨き職人の魅力は、「世界中のいろいろな靴に触れられるし、目の前でダイレクトにお客さんの反応が見られること」。路上での靴磨きの所要時間は15分程度。「靴がきれいになるのは当たり前で、それ以上に何ができるか。一人一人違うので、その15分を大切にした」と言い、いろいろな出会いがあったという。「わざわざ寒い日に『きっと大変だろうと思って』と差し入れを持ってきてくれる方、お客さんが来なくて心が折れそうだった時に『佐藤くんが夢をかなえるためにきっと役に立つから』と、費用の面倒をみてくれて研修に誘ってくれた方、『名刺くらいは持っていないと』と無償でマークや名刺、チラシのデザインをしてくれたフリーランスデザイナーの方など」。
そんな中、出会った人を通じて創業90年の歴史を持つオーダースーツなどを扱う「尾張屋洋品店」(中村区名駅5)店主の鵜飼さんと出会い、店の一角に靴磨きのスペースを設けることになった。「縁を感じた。節目の年で次の100年に向け何かやりたいと思っていた」と鵜飼さん。「店を継ぎたいと言ってくれている息子が我久くんの一番弟子(笑)。この先若い世代がつながっていってくれたら」と笑顔を見せる。これまでにも8回ほど、店内で靴磨きイベントを開いてきた。
店舗内にイギリスのパブで1930年代に使われていた木製のカウンターを取り寄せ設置し、カウンタースタイルの靴磨き専門店「靴磨きSTAND GAKUPLUS」にする。サービスのコーヒー(ほかドリンク)を飲みカウンター越しに会話を楽しみながら利用できる。カウンターや椅子などの設備、道具代など100万円の開業資金をクラウドファンディングで募ったところ、開始4日目でクリア。「出会った皆さんで作る店。ここからがスタート。これで寒い中、お待たせせずに済む」と佐藤さん。
オープンは佐藤さんの22歳の誕生日の10月9日を予定。1足30分程度で、料金は婦人靴=1,200円~2,000円程度、紳士靴=1,700円~2,600円程度(以上、税別)。スニーカー、カバンなど革製品、修理なども手掛ける。営業時間は12時~20時(予定)。日曜・月曜・祝日定休(予定)。
「両親に買ってもらった高価な野球道具を大切にする気持ちが元になっている。いいものを長くメンテナンスして使い続けていく文化を広めていけるような店にしたい」と抱負を語る。路上靴磨きは8月末で終了する。
現在はクラウドファウンディングで200万円を目指し、突破できるとサポーター全員に「靴磨き1回無料券」を進呈するほか、札幌、仙台、東京、大阪、広島、福岡に靴磨きの旅を行う。「遠くから応援してくれているお客さんの元に、これで靴磨きしに行くことができる」と意気込む。