販売を休止していたしゃち型のシュークリーム「シャチボン」が6月8日、名古屋駅構内の「カフェデンマルク JR名古屋駅店」で復活した。販売は2011(平成23)年2月末以来。
製造・販売は、「ぴよりん」を手がけるジェイアール東海フードサービス(名古屋市中村区名駅南1)。同商品を初めて販売したのは2000(平成12)年で、名古屋駅構内「カフェ ボンヴォヤージュ」がシャチと店名を合わせて「シャチボン」として提供した。シュー生地のパーツと生クリームやカスタードクリームでしゃちほこの姿を作り、生クリームとチョコレートで目を、イチゴで「舌」を表現する。
2004(平成16)年秋、「カフェ ボンヴォヤージュ」が閉店すると、現在の地下街「ファッションワン」に出店していた同社運営の喫茶店「黐木(もちのき)」(2009年3月31日閉店)が販売。2007(平成19)年オープンの駅構内の「カフェ アローム」(2011年2月末閉店)も販売し、両店の看板商品になったが、手作りで凝った商品だったことから生産が難しいこともあり、「カフェ アローム」の閉店とともに販売を取りやめ「休養宣言」した。
「カフェ アローム」の当時の店長で、現在は同社ベーカリー課の三原貴志さんは「発売当初の販売数は6個からのスタートだったが、後にファンの方が『シャチボン体験記』を作成するなど、SNS全盛期でない時代からお客さまに愛されていた商品」と振り返る。
休養宣言しても、一部の社員の間で「いつかは復活させたい」と常に話に上ったが、委託していた製造元の廃業や、社内での担当者の変更などで、再販計画の断念を繰り返してきた。復活を企てていた三原さんの上司がたまたま、当時シャチボンを作っていた職人と会う機会があり相談したところ、新たに製造委託できる会社を紹介してもらうことができ、今回の再販売にこぎつけた。三原さんはシャチボン復活のメイン担当に起用された。
三原さんは「シャチボンを売っていたことや当時のアルバイトスタッフの顔が頭をよぎるなど、気持ちがよみがえってきた。シャチボンのレシピは残っておらず、形からして手間のかかる商品。製造委託先には改めて会いに行き、熱意を伝えた。気持ちを共有できたと思う」と話す。
試作をする中で、尾の部分が薄く、安定して作れない課題が持ち上がった。三原さんは「当初は社内の意見を言葉だけで委託先に伝えていたが、これではいけないと思い、社内の店舗スタッフも試作に取り組んだ。安定生産できそうなアイデアを委託先と共有することもでき、一丸となって取り組んだ」とエピソードも明かす。復活を実現できたことついては「大きな理由として近頃、SNSで復活してほしいという声をよく見かけ、エネルギーをもらったこと」とも。
復活した「シャチボン」は、形は基本的に当初のものを再現。材料の品質の向上により味はバージョンアップ。尾の部分までカスタードクリームを詰めるように変更した。一つずつ手作りしているため、二つとして同じ姿のシャチボンはない。目の表情が異なる「ラッキーシャチボン」をおよそ100個のうち1個の割合で用意し、たまたま巡り会えた客が希望すれば、購入する権利を与えるという。
「今後はさまざまな食材、企業などさまざまなコラボにも挑戦したい。ひょうきんでポップなスイーツだからこそ、たくさんの人に笑顔を提供できると思う」と広報担当者の依田浩明さん。「『ぴよりん』との関係については、同商品を『シャチボン先輩』と呼ぶ投稿もSNS見かけた。うれしく思う」とも。
価格は、テイクアウト=594円、イートイン=605円。営業日の14時販売開始。