名駅西の映画館「シネマスコーレ」(名古屋市中村区椿町8、TEL 052-452-6036)で10月24日から、新潟県中越大震災直後から約4年間、小さな村の復興の姿を追ったドキュメンタリー映画「1000年の山古志」が公開される。
映画の舞台は、震災で壊滅的な打撃を受けた新潟県の旧山古志村(現長岡市)。千年の歴史を持つ山古志村は、丘陵地の斜面に棚田が広がり、ニシキゴイの養殖のほか、「牛の角突き」と呼ばれる闘牛が行われ「古き良き日本」が見られた場所。
監督は、震災直前に山古志村に現存する手掘りトンネル中山隧道を、村人たちと手作りで撮影した映画「掘るまいか」を手掛けた橋本真一監督。「掘るまいか」以降、村の人たちと親交を深めてきた橋本監督は、変わり果てた村を見て「自分たちに何ができるか」と問いかけた結果、「村が再出発するまでスタッフと一緒に寄り添い、最後まで見届けようと決めた」という。
映画の前半は、中越大地震の勃発から始まり、山が崩れ、道路がめくり上がり、川に土砂が流れ集落を水没させ仮死状態になった村と復興への姿を追う。中半からは、水没した集落や全倒壊した集落の人たちの直面した人生の選択、復活への努力に焦点を当て、後半は困難を乗り越えた人々の達成感と喜び、復元してくる集落の姿を映し出す。
山古志と10年かかわってきた橋本監督。「撮影中は山古志に家を借り、農作業を手伝ったり、地元の祭りに参加したり土地の人のような生活をしていた」と振り返る。「村に滞在しているときも撮影時間より復興作業を手伝う時間の方が長かった」としながらも、「カメラを回していることが村人に『復活するんだ』という勇気を与え、わたしたちスタッフもそんな姿に逆に勇気をもらった」と語る。
「この作品は単に復興を描いた作品ではなく、村の深さ、人間力を描きたかった」と橋本監督。どんな過酷な逆境に置かれても「やはり山古志がいい、ここに住みたい」と住民の多数が戻ってくる。「村人が厳しい困難を乗り越えてでも帰りたいと思う『村』『ふるさと』とは何のか。大事なものを譲り受け、次の世代に引き継ぎ命が山古志という土地で千年もの間リレーされ続け、大地に根を張って生きている山古志の人々の根底にあるものは何なのか。その答えを探しながら撮影した」という。撮影を終え「少しは見えた気がする」と橋本監督。「言葉にするのは難しいので、映画を見てそれぞれが感じてほしい」と語りかける。
前作の「掘るまいか」も同日から上映予定。