名古屋駅から地下鉄で1駅のところにある名古屋で一番古い商店街とされる「円頓寺商店街」(名古屋市西区那古野1)では、老舗店が初のテークアウトに乗り出すなどしながら、コロナ禍に立ち向かっている。
昔ながらの店や雰囲気を残しつつ、昨今は新しい店やイベントも増え注目されている同商店街。振興組合理事長の田尾大介さんは、商店街内で1階に喫茶・食堂、2階にゲストハウスのある店を運営しているほか、外国人向けのツアープログラムの企画・販売を手掛ける事業も担っている。2月末あたりから、外国人、日本人共に宿泊のキャンセルが増え始めたという。
「宿泊予約の動きを実感していたので、飲食だけのお店より先に危機感を持ち始めていた」(田尾さん)と振り返る。新型コロナ関連の報道が加速し、近隣の店主らとの立ち話で「このまま営業していていいのか、どうしようか」と不穏な空気が流れる中、緊急事態宣言や休業協力要請にあわせ、各店で法令に準じ対応するように案内していたという。20時以降も営業していた店には休業協力金の説明も兼ね、直接に出向いたことも。
休業協力要請が明けた現在は、消毒やマスク着用などの対策を講じ、時短営業や飲食店では席数を減らすほかテークアウト販売などで営業再開する店が多い。「老舗店でも今までやってこなかったテークアウトや、夜営業のみの店が昼間に弁当、夜にはつまみを販売するなど、皆さん工夫して営業している」(田尾さん)。
同商店街の夏の風物詩「円頓寺七夕まつり」は中止が決定している。「大きなイベントなのでたくさんの人を巻き込み、費用もかかる。何かあったときにすぐにストップできない。ほかイベントは、商店街の中で完結できるレベルのものを考えていきたい」。
田尾さんによるとコロナ禍の前から、商店街では近隣の住民やワーカーなど「普段使い」の需要に注力することを考えていたという。「イベントはたくさんの人が来てくれてうれしいが、イベント以外では来ない。マンションも増え新しい住人も増えているが商店街をアピールできていない」との課題もある。
「テークアウトやお弁当など新しい提供方法に対応できたのでそれを生かしたい。飲食店も物販店もコロナだけの対策ではなく、今後この事態が収まった後にも、円頓寺商店街の魅力を伝える、楽しんでもらう、使ってもらえる、将来プラスになる仕組みを構想中。各店の情報を商店街がまとめて発信できるようにしたい」と笑顔を見せる。