医療現場のパソコンのキーボードをラップフィルムで覆って院内感染予防できる装置「タッチラップ」の製品発表会が12月18日、名駅エリアで行われた。
製品「タッチラップ」を使いラップフィルムでキーボードを覆った状態
東京医科大学病院感染制御部の中村造准教授監修の下、自動車の扉や窓に使うゴム製品を作る金型のメーカー「エムエス製作所」(清須市)と特殊鋼専門商社「山一ハガネ」(名古屋市緑区)が共同開発した。
自身も医師であるエムエス製作所社長の迫田邦裕さんが「ものづくりの力で医療従事者の支援をしたい」という思いで、同級生の中村准教授に新型コロナウイルス感染症の第1波の経験を生かし、第2波に備えた感染予防における困りごとを聞いたことに始まる。中村准教授からは「医療現場で使うパソコンのキーボードの溝が掃除できない。キーボードの清掃がしやすい機器が欲しい」という現場の声を受けた。
迫田さんによると、「既存のシリコンカバーでは凹凸があり、溝の清掃は手間が掛かる。キーボードの凹凸を覆うことで清掃しやすく、次に使う人が清潔に使えるものを」と考えを進めた。
考え出したのは、キーボードをラップで覆い、使う度に新しいラップに代えること。製品「タッチラップ」に市販のラップを取り付け、覆われたラップ越しにキーボードを操作でき、作業が終わったら使用した面のラップを手動で巻き取り、再び新しいラップで覆うことが簡単にできるもの。市販のラップ(50メートル)1本で約100回交換できるという。
商品開発の担当者は「ハンドル式の巻き取り方法も試作したが、医療現場の意見はそのハンドルや溝を清掃するのが困難というものだった。ラップを巻く時など触ってしまう工程もあるが、その部分や手を消毒する方が現場としては簡単などの声を反映した」。電動式も考えたというが、「時間と費用を掛ければいくらでも電動化できるが、今はスピードを優先した」とも。中村准教授からは「最高」という声が届いているという。
仕事の合間を縫って会見にオンラインで参加した中村准教授は「キーボードの入り組んだ溝がアルコール消毒できれいになっているかも怪しく、 清掃するにもスタッフにかなり労力が掛かる。今回、そうした問題をうまく簡単に使えるものを画策してくれたと思う」と話した。
来年1月に30台のサンプル機器を医療現場に無料提供し、使い勝手など上がってきた意見を反映し商品の改善を図っていくという。効果を実証して量産化を目指す。現在特許出願中。販売金額は1万円~2万円を目指す。
「今後、医療現場だけでなく、例えばATMのタッチパネや役場などの公共の場で広く活用される製品に育てていきたい。利用者の声を反映し皆さんと共に作り上げていきたい」(迫田さん)と意気込む。