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戦後と現在の情景重ねて 名駅西ホリエビルで写真展「NENアーカイブス」

写真展を企画した林浩一郎さん(左)と堀江浩彰さん(右)。林さんの手には、かつて名古屋駅西にあった笈瀬(おいせ)川に生息していたと伝わるカッパをモチーフにしたあみぐるみが

写真展を企画した林浩一郎さん(左)と堀江浩彰さん(右)。林さんの手には、かつて名古屋駅西にあった笈瀬(おいせ)川に生息していたと伝わるカッパをモチーフにしたあみぐるみが

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 参加型写真展「NENアーカイブス~駅裏が存在する限り 戦後は終わらない~」が9月17日、名古屋駅西の「ホリエビル」(名古屋市中村区椿町12)2階ギャラリーで始まった。

「NENアーカイブス」会場の様子

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 同写真展を企画したのは、ホリエビル代表で「屋上とそら」社長の堀江浩彰さんと、2015(平成27)年から名古屋駅西エリアを調査研究する名古屋市立大学人文社会学部准教授の林浩一郎さん。2019年5月、「名古屋駅西の古い写真の展示会をしたい」と考えた堀江さんは、SNSを使って過去に撮影された名古屋駅西エリアの写真を募ることを思い付いた。しかし、思うように写真が集まらなかったという。

 転機が訪れたのは2020年冬。林さんが調査研究の過程で、駅西エリアで事業を営んでいた平子純さんと杉山雄彦さんに出会い、2人が保管していた1960年代の写真約300点を資料として借りられることになった。林さんは「古い時代の写真を借りられる見通しが立ったことで、堀江さんと改めて写真展の企画を練ることに。やりとりする中で『東海道新幹線開通に沸く1960年代と、リニア開発が進む現在との比較ができたら面白いのでは』という話になり、写真展の軸が決まった」と振り返る。

 写真展名の「NEN」は「名古屋」「駅」「西」の頭文字を取った略語で、副題には平子さんが1985(昭和60)年に発表した小説「河童」の一節を引用。「駅裏」は、名古屋駅西エリアを指している。

 「展示する写真が映し出すのは、過渡期のさなかにあった街の情景。闇市由来のマーケットが広がる『駅裏』は、『敗戦』を想起させることから否定的なまなざしにさらされてきた。だからこそ当時の行政も世間もメディアも、駅西のマーケットの人々さえも『戦後を終わらせる』ために模索していた。『東海道新幹線開通』という都市開発プロジェクトは、当時の人々にとって脱却の一歩といえる」(林さん)。

 1階から2階に続く階段の壁とギャラリースペース内に写真約100点を展示。いくつかの写真には、風景に関する情報などが書かれた付箋が添えられている。付箋の内容は来場者が書いたもので、堀江さんは「訪れた人の記憶や情報を重ねることで街の記憶を鮮明にしていく、市民参加型の展覧会にしたいと考えた」と笑みを浮かべる。ギャラリースペース入り口横の壁面には1960年代の大型地図を展示し、写真が撮影されたと思われるスポットをシールで示している。

 堀江さんと林さんは「今回は1960年代に焦点を当てたが、バブル期の1980年代、名古屋駅前が大規模な都市再生政策に沸いた2000年代、リニア開発が本格化する2020年台と、各時代の情景を伝えていきたい。さらに写真や資料を集め、毎年開催できたら」と意気込む。続けて「名古屋駅周辺にまつわる古い写真や動画、物品などの情報は引き続きSNSを使って収集していく考え。市民参加の間口をさらに広げ、集合的記憶の構築を目指したい」と話す。

 開場時間は11時~19時。日曜・祝日休廊。10月8日まで。

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