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名古屋の映画監督・森零さんが小説出版 元零戦搭乗員の生涯描く

小説「零の命 元零戦搭乗員原田要の一世紀」を出版した森零さん

小説「零の命 元零戦搭乗員原田要の一世紀」を出版した森零さん

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 映画監督の森零さんが8月11日、第二次世界大戦の元零戦搭乗員の生涯を描いた小説「零(ゼロ)の命 元零戦搭乗員原田要の一世紀」を出版した。発行元は人間社(名古屋市千種区今池1、TEL 052-731-2121)。

表紙は森さん描き下ろし

 森さんは名古屋出身。名古屋や東海地区の文化・芸術・歴史を映画にして保存するプロジェクト「名古屋活動写真」の映像作家として、「名古屋空襲を語る」「名古屋城物語」「熱田物語~神話から心和へ~」などのドキュメント映画を制作。現在も那古野を拠点に地域活性化、街づくり活動を展開している。

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 同書は第二次世界大戦に零戦搭乗員・特攻隊教官として従軍した原田要さんの回想を、100時間にわたりインタビューした森さんが小説として再構築した作品。戦地での過酷な体験や戦友、家族との絆を主人公の視点と言葉でリアルに描いている。

 「2011年に名古屋空襲のドキュメンタリーを制作した際、原田さんと知り合い、人柄にほれ込んだ」と森さん。「悲惨な戦地で生き残り、戦後は農業や幼稚園の園長などで子どもたちを育て、戦争の真実を伝える努力をしてきた人。人は一生という時間をこんなふうに使い切れるのだなと心を動かされ、彼の生涯を世界中に伝えたいと思った」と振り返る。

 「原田さんのインタビュー映像などを2014年に『命の軌跡』というドキュメンタリーとしてまとめたが、何とか視覚化して劇場用映画にしたかった。企画書を各所に持ち込み映画化を目指したが、道は険しかった。今の映画製作は原作となる小説や漫画があるとプロジェクトが進むことも多いので、さまざまな模索の一つとして小説化に取り組んだ」と執筆の経緯を話す。

 初めての小説執筆は約半年かかり、編集者と話し合いながらさらに半年をかけて完成にこぎ着けた。「ずっとやってきた映像とは違い、文章で人の頭の中にイメージを起こさせることは難しい。映像化を意識して、原田さんの見た風景、交わした言葉を大切に書いた。読んでいる人が70数年前のにおいや空気を感じられるように苦心した。悲惨な戦場なのにとても美しかったという南国の自然の描写にも力を入れた」と執筆の苦労を語る。表紙にした絵「斜陽」は森さんの描き下ろしで「第1章のシーンにある、原田さんがつぶれた零戦のコクピットから出て、無残な機体の姿を見た時の光景で、ガダルカナルの海が光っている」と話す。

 小説を書き上げて、映画のイメージはさらに鮮明になったという森さん。「自分の頭にイメージはあったが、言葉と文字に変換したことによって、明確に伝えられるという自信になった。この小説から映画のコンテを作ることも可能なくらい。映画を楽しみにしていた原田さんが2016年に亡くなったことはとても残念。この映画は仕事とかではなく、全身全霊を懸けて作り上げることが自分の役目だと思っている」と意気込む。

 最後に森さんは「原田さんとの出会いは、僕の人生で最大の分岐点になった。戦争はあくまで背景で、原田さんの温かさや清らかさに触れてほしい。大げさに聞こえるかもしれないが、生きていく上での糧になるような本。映画化はもちろんだが、たくさんの方にこの本を知ってほしい」と呼び掛ける。

 仕様は四六判、224ページ。価格は1,728円。

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