名古屋城(名古屋市中区本丸1)内に4月16日、同日、プレオープンした「西の丸御蔵城宝館」で「銅しゃち」などを展示する「鯱(しゃち)展」が始まった。
「西の丸御蔵城宝館」は、かつて米蔵が立ち並んでいた城内の「西之丸」に新設。名古屋の歴史を築城から現代までを分かりやすく紹介する「歴史情報ルーム」、現存する旧本丸御殿障壁画と同城が所蔵する資料を用いた展覧会を行う「展示室」、同障壁画などを保管する「収蔵施設」から成る。外観は米蔵を「できる限り」再現したデザインだという。
「歴史情報ルーム」は築城期、江戸期、明治維新以降の3つの時代で構成。名古屋城を絡めて解説する尾張藩や、名古屋文化が栄えたころ、近代の名古屋における名古屋城などをパネルで紹介するほか、触れられる金しゃちのうろこと同じ大きさのレプリカや石垣の素材の展示、クイズや殿様の「ある日」の暮らしの紹介なども。
「展示室」ではプレオープンの記念企画「鯱展」を開催。現在、栄で展示中のため、天守閣を「不在」にしている金しゃちに代わり、江戸城から名古屋城に移設され門ややぐらを飾っていた「銅しゃち」をメインに展示する。名古屋城は明治時代に入ると陸軍の持ち物になり取り壊しの危機を迎えたが、名城として永久保存が決まると宮内省所管として天皇の離宮になった。学芸員の朝日美砂子さんによると、「名古屋城所管の銅しゃちを一堂に展示するのは初めて」という。
会場入り口では、尾の部分が欠けてしまった銅しゃちが出迎える。正門に掲げられていた銅しゃちで、1945(昭和20)年に空襲で焼失した正門が崩れたことで落下し割れてしまったとものだいう。そのほか、半分に割れた状態や内部の木材が焼け焦げた状態など、空襲を受けた銅しゃちを展示している。
焼夷(しょうい)弾爆撃の猛火や爆風を受けた金しゃちのうろこなども展示。焼け跡には溶解したしゃちの一部が金の塊として残っていたという。焼け残りの金を使って作られた純金の茶釜も展示する。
1930(昭和5)年に名古屋市に返されて以降、市が修理、保存のために調査を始めた金しゃちの記録写真や実測数値を鉛筆で書き込んだ野帳、建物の図面なども展示。
「天皇の離宮となった名古屋城はほかの城とは全く違う歴史。天守閣だけではなく、歴史の積み重ねを具体的に教えてくれる資料がたくさんある。ぜひじっくり見てほしい」と来館を呼び掛ける。
開館時間は9時~16時30分(4月29日~5月5日は17時30分まで)。観覧無料。名古屋の城観覧料(大人=500円、中学生以下無料)が必要。「鯱展」は5月9日まで。同館は5月10日から休館し、今秋オープン予定。