名古屋のどて煮店を切り盛りする猫の姿をした姉妹「トラ」と「ミケ」が主人公の漫画の第5巻「トラとミケ うれしい日々」が9月14日、発売された。
経営するネイルサロンの仕事に追われ恋愛をしても長続きしない「ルミちゃん」が登場する一幕
小学館発行の女性週刊誌「女性セブン」に連載中のねこまきさんの漫画作品を再構成し、加筆・修正してまとめた単行本。ねこまきさんは名古屋を拠点に活動するイラストレーター。2019年発行の1巻は6刷、2・3巻は共に4刷、4巻が3刷まで増刷された人気作品。5巻までの累計部数が10万部を超えた。
作品は季節に沿った12話で構成。トラとミケのほか、店の常連の個性的な登場人物(猫物)や、店で提供する料理、会話で飛び出す名古屋弁などが物語を彩る。
何気ない日常の中に訪れた幸せな時間をテーマに描かれる5巻は、シリーズ史上「最幸傑作」とうたう。ネイルサロンを営み、仕事に追われ恋愛をしても長続きしない「ルミちゃん」の恋愛模様と、トラとミケの幼なじみで妻に先立たれた高齢の「シンちゃん」の再婚までの道のりを描く、大きく2つの恋愛の話をつづる。
同作品を担当する編集者の橘高真也さんは「ハラハラ、ドキドキしながら読んでほしい。結果的にうまくいかなかったとしても、物語のように心が動く瞬間が多い人生は幸せなのでは、と思ってもらえるとうれしい」と話す。
「折り合いをつける」というのも今作のテーマの一つ。作中では、別れた夫婦が子どもの親としてもう一度向き合うことや、亡くなったパートナーの思い出ごと前へ進むこと、待つのではなく自分から思いを伝える姿などが描かれる。「本文中に『時薬(ときぐすり)』と表現があるが、かたくなな心を少しずつ解きほぐしていければ幸せかなと思う。実生活では簡単ではないが、何か気づきがあればうれしい」と橘高さん。
サブタイトルの「うれしい日々」には「うれしくない日々も人生にあるということも伝えている。そう思うと、うれしい日々はありがたいと思える。うれしい日々が、読者の皆さんにもたくさん訪れるようにと願いを込めた」(同)とも。
同シリーズの魅力について「大切な人を失ったり、大きな失敗をしたり…、人生にはさまざまなことが起きるが、捨て鉢にはなってはいけない、きっと幸せは訪れると思わせるような、悲しみや寂しさにそっと寄り添い、前向きな気持ちにさせてくれる作品だと改めて感じる」(同)と説明する。今作にある七夕の短冊に願い事を書くシーンについて触れ、「いつの間にかそうしたことをしなくなったと思い出した。七夕に限らず、忘れていた記憶を引き出してくれるのもこの作品の魅力」とも。
仕様はA5判、176ページ。価格は1,485円。