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名古屋ピカデリーで映画「今日子と修一の場合」-奥田瑛二監督が来名

来名した奥田瑛二監督

来名した奥田瑛二監督

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 名駅の映画館「ピカデリー」(名古屋市中村区名駅4、TEL 052-551-5461)ほかで10月5日から、映画「今日子と修一の場合」が公開される。公開に先立ち、奥田瑛二監督が来名し、会見を開いた。

今日子と修一の場合

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 愛知県出身の俳優・奥田さんの映画監督第5作目。今作は東日本大震災を背景に、心のよりどころを失くした2人の若い男女を通じ、まだ癒えることのない日本の傷跡を生々しく描く。主人公の男女を奥田監督の娘で女優の安藤サクラさんと、柄本佑さんが演じることも話題だ。

 家族を養うためにやむなく他人に身体を許してしまい、故郷を追われる身となった今日子(安藤さん)。大学受験を控える中、母を守るために暴力的な父を殺害してしまった修一(柄本さん)。それぞれの理由で宮城県南三陸町を離れた2人は、東京で生活を始める。故郷に帰れない2人は東京で震災の惨状を知り、ニュース映像に言葉を失う。

 震災から9カ月たって、南三陸町を訪れた奥田監督。「震災の直後はオークションやコンサートを開催して募金を集めるなど夢中でやっていた。そして自分のやっていること、やるべきことは何なのか、自身を問い詰めていた。青年たちの復興会議に出席するために被災地を訪れ、到着した夜にはいろいろな意見をいったが、翌日に実際に町を見て回り衝撃を受けた。現地の人たちに自分の意見は空論だったと撤回して、映画を撮る準備をすると伝えた」と映画の始まりを振り返る。

 主人公の2人は故郷を離れた地で震災を体験する。監督は「自分が撮るならどんな映画だろうと考えた。津波で町が壊れ、人々が逃げ惑うような作品、回想が入る思い出の映画などは、10年以上たてば大手が予算をかけて撮るだろう。そこにいなかった人、故郷が東北の人はたくさんいる。いろいろな事情で帰れない人もいるだろうと思い、東京を舞台に未来に向かって生きていく青年とからっぽになっていく女を描いた。あれだけの津波とバランスがとれるストーリーには悩んだ。2人の心の中の津波を表現するために、かなりの十字架を背負わせた。そこに現代社会が表現できればいいと思った」と物語に込めた思いを語る。

 映画後半には2人がそれぞれの思いを抱えて被災地に足を運ぶ。がれき、仮設住宅など全ての場所を自由に撮影させてもらえたという。「南三陸町の町長や青年たちには震災のど真ん中で苦労する映画ではなく、シビアなストーリーにすると伝えた。東北の姿を撮ってくれるならそれでいい、どこを撮ってもかまわないといってもらえた。皆さんにはとても感謝している」

 男女を演じた2人について監督は「まず佑くんにオファーして『修一』を決めた。当時2人は婚約していたので、遠慮もあってサクラは考えないようにしていた。しかしスケジュールなどで女優が決まらず悩んでいたところに、サクラから参加したいとメールが来た」と、キャスティングの経緯を明かした。また、「演技の指示や相談は全くしなかった。役者に注文をしなかったのは初めて。悲惨な町の様子を撮ろうという負のあこがれだけを持っていたら、もっと演技させていたかもしれない。でもあまり下見もさせず、2人を撮影場所に連れていった。全部を彼らにゆだね、感じたままに動いてもらった」とも。

 「自分らしい映画になった」と奥田監督。過去の重い罪を背負いながら再び人生を生きようとする人の姿を描いた作品となった。「人をつないできたもの、明日につなぐもの。どんな人にも何かあるはずで、それを見つけたら生きていける。絶望的で救いがない映画では意味がない。その思いを根底に持って撮影した」と話し、多くの来館を願った。

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