株式会社エムエム総研(所在地:東京都新宿区、代表取締役:萩原 張広)は、従業員数100名以上のBtoB企業に所属する、インサイドセールス・営業・CSの実務担当~管理職・経営層を対象に、「BtoB営業における生成AI活用と独自顧客データ取得の実態」に関する調査を実施しました。
生成AIの業務活用が急速に広がり、BtoB営業においても「AIを使うこと」自体はもはや差別化要因ではなくなりつつあります。一方で、商談化率や受注率といった成果指標には、依然として企業間で差が見られるのが実態です。では、その差はどこから生まれているのでしょうか。
本調査では、営業活動における「どのような顧客データが取得され、どこまで活用されているのか」という実態に焦点を当て、その傾向を整理しました。
約7割が営業活動で生成AI・AI技術を活用も、従業員規模によって差があることが判明!

「あなたの部署の営業活動において、現在生成AI・AI技術をどの程度活用しているか」と尋ねたところ、約7割が『よく活用している(27.9%)』『ある程度活用している(42.8%)』と回答しました。
※『経営・会社運営全般』と回答された方は、営業部門での活用状況を想定して回答。
※『カスタマーサクセス・顧客サポート』と回答された方は、CX業務や顧客とのコミュニケーションにおける活用を想定して回答
この結果から、既に多くの現場で実用化が進んでいる状況がうかがえます。人手不足や業務効率化が急務となる中、日常的な業務をサポートするツールとして生成AIへの期待が高まっていると考えられます。
では、営業活動における生成AI・AI技術の活用状況は従業員数の規模によって異なるのでしょうか。

企業規模別に見ると、従業員数1,000~1,999人の企業で『よく活用している』が34.4%と最も高く、一方で100~299人の企業では『まったく活用していない』が17.5%にのぼるなど、組織規模に応じた活用の差が見られました。
人手不足や業務効率化の要求が強い中で生成AIの導入が進む一方、中小規模の組織では推進体制やノウハウの不足が障壁となっている可能性が考えられます。
では、営業活動においてどのような生成AIツールが選ばれているのでしょうか。
ここからは、生成AI・AI技術を『まったく活用していない』、または生成AI・AI活用にまったく投資しておらず、AIエージェントを『活用していない』と回答した方以外にうかがいました。

「営業活動において実際に活用している生成AIツール」を尋ねたところ、『汎用AI(Copilot、ChatGPT、Claude、Geminiなど)(67.5%)』と回答した方が最も多く、『プレゼン生成特化AI(40.4%)』『音声分析・フィードバック特化AI(27.7%)』となりました。
「汎用AI」が圧倒的なシェアを占めている背景には、チャット形式で手軽に利用できる点や、幅広い業務に適用できる汎用性の高さがあると考えられます。
また、プレゼン生成や音声分析といった「特化型AI」も一定の割合で活用されており、営業プロセスの特定課題に対して、より精度と実用度の高い解決策を求める方が一定数存在することがうかがえます。
さらに、「営業活動における生成AIの活用用途」を尋ねたところ、『壁打ち(アイデア出し)(38.3%)』と回答した方が最も多く、『コンテンツ・資料・メール作成(36.8%)』『シナリオ策定(営業戦略・アプローチ設計)(35.6%)』となりました。
生成AIの導入自体は進んでいるものの、その活用は主に業務効率化や思考補助といった初期的な領域にとどまっており、個別最適化・予測・人材育成などの高度活用はランク外の20%前後以下にとどまっていることが示唆されます。
現時点では、活用の「広さ」と「深さ」の両面において、まだ発展途上の段階にあるといえるのではないでしょうか。
約9割が独自顧客データの重要性を認識しているものの、データの「活用」工程にやや課題感あり
事前準備におけるAI活用が進む一方で、汎用AIの回答精度を高める「自社独自のデータ」についてはどのように捉えられているのでしょうか。

「AI時代において、自社独自の顧客データの取得・活用の重要性をどのように感じるか」と尋ねたところ、約9割が『非常に重要と感じる(33.8%)』『ある程度重要と感じる(52.0%)』と回答しました。
大多数が自社独自の顧客データの取得・活用の重要性を認識しており、汎用AIから得られる一般的な回答だけでは、実際の商談や顧客課題の解決には不十分であるという現場の実感を示していると考えられます。
競合他社との差別化を図るためには、現場でしか得られない「生の声」や「固有の文脈を持ったデータ」が不可欠であるという価値観が、広く浸透してきている様子がうかがえます。
では、実際の管理・運用はどこまで進んでいるのでしょうか。

「自社独自の顧客データ資産について、以下の各工程をどの程度適切に行えていると感じるか」と尋ねたところ、『十分に行えている』と『ある程度行えている』を合わせた割合は、「設計」が70.0%、「取得」が67.9%、「蓄積」が65.2%、「活用」が64.1%となりました。
設計・取得・蓄積・活用の各プロセスで「十分に行えている」は15~18%にとどまっており、データを集めることはできても、それを実際の分析や施策に落とし込む「活用」の段階で足踏みしている企業が存在する可能性が考えられます。
取得できている情報は「連絡先情報」や「公開情報」が中心。データ活用を阻む壁とは?
データ管理の各工程における実態が見えてきましたが、実際に現場で取得・蓄積できているのはどのような情報なのでしょうか。
「自社独自の顧客データ資産について、現在取得・蓄積できている情報の種類」を尋ねたところ、下記のような結果になりました。

企業が保有する顧客データの中心は、連絡先や公開情報、購買・利用履歴などの比較的取得しやすい情報であることがわかります。それでも全体の約3~4割にとどまりました。また、上記ランク外には「顧客とのコミュニケーションで得られる組織課題」や「顧客とのコミュニケーションで得られる社内環境」などがあり、より深い顧客理解につながる情報の蓄積は限定的な傾向がみられました。
また、部門別に見てみると、どのような違いがあるのでしょうか。

営業では、「営業・商談プロセス情報」が上位に入る反面、インサイドセールスやカスタマーサクセス・顧客サポートでは「購買・利用データ」が重視される傾向がうかがえます。しかし、「組織課題」や「計画や意向」といった顧客の深層ニーズに関わる定性情報は、どの職種においても下位にとどまる結果になりました。
では、こうした顧客データの取得から実際の活用に至るプロセスにおいて、どのような障壁に直面しているのでしょうか。
「独自データの取得・蓄積・活用を進めるうえでの課題」について尋ねたところ、下記のような結果になりました。

どの従業員数規模においても、『活用できる人材が不足している』『取得はできているが、AI活用スキルが不足している』が上位を占め、『顧客との会話・接点の機会そのものが不足している』も共通して高い水準となりました。
また、従業員規模が大きくなるにつれて課題の項目数が広がる傾向が見られ、特に従業員数1,000人以上の企業では『データの品質・整備状況に課題がある』への回答割合が高くなっています。
大企業ほど蓄積されるデータ量が膨大になるため、データの品質や整備状況に関する課題が顕在化しやすいと考えられます。
自社独自の顧客データの取得・蓄積強化に必要なのは「情報を引き出すスキル」
それらのハードルを乗り越えて取得・蓄積を強化するためには何が求められているのでしょうか。

「自社独自の顧客データの取得・蓄積を強化するうえで、何が必要だと感じるか」と尋ねたところ、『顧客との会話を通じて情報を引き出すためのスキル強化(38.7%)』と回答した方が最も多く、『顧客との接点(商談・ヒアリング機会)の拡充(34.8%)』『データ活用の目的・活用シナリオの具体化(30.4%)』となりました。
顧客から深い情報を引き出すためのコミュニケーションスキルの向上に加え、商談やヒアリングといった顧客接点そのものを広げていくアプローチが重要視されているようです。
あわせて、収集したデータをどうビジネスに活かすかという具体的な活用シナリオを描くことや、集めたデータを統合管理する基盤の整備も同時に求められています。

さらに、どの部門においても、顧客とのコミュニケーションスキル向上や接点の拡充が必要とされる割合は約4割となり、現場における対人対応の重要性が共通して認識されていることが示されました。
一方で、部門ごとの違いを見ると、経営・会社運営全般においては全体的に回答割合が高く、組織課題としての認識の深さがうかがえます。
また、カスタマーサクセス・顧客サポートでは『データを一元管理・共有できる基盤の整備』や『現場で無理なくデータを記録できる業務プロセスの整備』が上位に入っており、顧客データの記録や共有体制に対して他領域よりも比較的強い課題感を持っている様子が見られました。
まとめ:AI時代のBtoB営業 ― テクノロジーを活かす「人間のスキル」の再評価
今回の調査で、BtoB企業の営業現場における生成AIの活用実態と、それに紐づく顧客データマネジメントの現在地が浮き彫りになりました。
約7割が営業活動において生成AI・AI技術を活用しており、業務効率化やアイデア出しの強力なサポートツールとして定着しつつあります。
利用場面としては、アイデア出しや文章の推敲といった準備段階での活用が中心となっており、実務の効率化に一定の成果を上げている様子が見られました。
また、多くの方がAI時代において、自社独自の顧客データの取得・活用の重要性を認識していることも明らかになりました。
しかしながら、自社独自の顧客データを取得・蓄積し、それをAI活用や営業施策へつなげるプロセスにおいては、さまざまな課題も浮き彫りとなっています。
データの「蓄積」や「活用」のフェーズ、さらには顧客の組織課題や意向といった「定性的な深い情報」の取得において、多くの企業が壁に直面しています。その根本的な原因として浮かび上がったのが、「AIを活用する人材のスキル不足」と「顧客から情報を引き出すヒアリング能力の不足」でした。
競合他社にない独自のインサイトを得るためには、顧客と向き合い、信頼関係を築きながら必要な情報を引き出すという、営業担当者の「対人力」が欠かせません。
AI時代が本格化する中で、企業に求められているのは、システムの導入と並行して、それを使いこなし、顧客の声を引き出せる「人間の育成」であるといえるでしょう。
インサイドセールス包括支援「BtoB Sales DX」

今回、「BtoB営業における生成AI活用と独自顧客データ取得の実態」に関する調査を実施した株式会社エムエム総研は、インサイドセールス包括支援ソリューション『BtoB Sales DX』(https://salesrenovation.jp/)を提供しています。