映画「キャタピラー」-若松孝二監督・寺島しのぶさんらが舞台あいさつ

左から大西信満さん、寺島しのぶさん、若松孝二監督

左から大西信満さん、寺島しのぶさん、若松孝二監督

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 名駅西の映画館シネマスコーレ(名古屋市中村区椿町8、TEL 052-452-6036)で公開される映画「キャタピラー」のキャンペーンが6月24日、「ウィルあいち」(東区)で開催された。

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 監督は同映画館の設立者でもある若松孝二さん。主演は寺島しのぶさん、大西信満さんで、当日は3人が舞台あいさつと記者会見を行った。

 映画の舞台は1943(昭和18)年、世界各地で戦局が激化して行く戦時中。激しい戦闘の末、四肢、聴力、言葉さえも失った一人の傷病兵・久蔵が妻・シゲ子の元に返った。多くの勲章を胸に「生きる軍神」として祭り上げられた久蔵。かつて暴虐だった久蔵を献身的に世話するシゲ子。言葉を失い自分では何もできない久蔵は食欲と性欲だけ強く求める。食べて寝てを繰り返す久蔵にシゲ子は、「軍神」を外に連れ出し村人に見せびらかすことでストレスを発散し仕打ちをする。実際の処刑シーン、原爆などの映像も取り込んだ戦争の姿を描いた作品。

 この時代、小学校3年生だったという若松監督。仙台が焼夷弾(しょういだん)で真っ赤に燃えていたこと、ジープを追いかけてチョコレートをもらったことを覚えているだけで、反戦の気持ちもなく掘り下げて考えたことがなかったと振り返る。20歳の時に助監督としてかかわった戦争映画をきっかけに、戦争について初めて勉強したという。「こんな人を不幸にすることはない。友情をテーマにしたかっこよく描く戦争映画もあるが、戦争はただの人殺しだということを知ってほしい。正義の戦争なんてない」とメッセージを送る。

 監督から手渡されたシナリオはシンプルなものだったと振り返る寺島さん。「書かれていない部分に思いがあり、そこにシゲ子と久蔵の姿が見えてきた。本を読んだ後、体がビリビリして『これはやらないと』と思った」といい、台本を読んで出演することをすぐ決めたという。「細かい琴線のような感情を表現できればと思った。フランス人の夫も『こんな戦争映画は見たことがない』と言ってくれた、汚い部分もフェアに描いている映画。日本人として一人でも多くの人に見てほしい」とも。

 失った四肢を、手足を縛り見せないように撮影に挑んだという大西さん。「動きに制限はあったが苦労はなかった。言葉がないゆえ『ただ、いる』という空気感を大切に心がけた」。もがき苦しみのたうち回るシーンでは「初めて台本を読んだときから久蔵という役はこのシーンに凝縮されていると思った。重苦しい映画だが、どんなに激しく、重く演技をしても、事実以上に重くなることはない」。

 2週間の撮影を予定していたところ、12日間で撮影を終えたという同作品。「テストなんてできるものじゃない。思っている以上の芝居を2人がしてくれて、演技は一発オッケー。だから早く終わった。ホテル代もかかるしね」と笑顔の若松監督。初日のあいさつの後、そのまま本番の撮影を始めたという。「ほぼ順序通りで、ほぼ休みもなく撮影した。監督の演出方法でテンポよく、効率的に、一番いいところを撮ってもらえたのでは」(寺島さん)。

 映画の公開は8月14日。

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