
能は、「謡(うたい)」と呼ばれるセリフやメロディーと「舞」によって物語が展開する、日本の伝統的な舞台芸術です。本展では、お能をまったく知らない方にもその魅力を身近に感じていただけるよう、能面や装束などの見どころをイラストなどを交えてわかりやすくご紹介します。600年以上にわたり受け継がれてきた幽玄な能の世界へ、はじめの一歩を踏み出してみませんか。
見どころ1. 欠かせない道具「面(おもて)」
能楽師は単に役を演じるのではなく、その存在を身に宿すという考え方のもとで舞台に立ちます。その際、神や鬼、霊、女性、老人などを表現するために用いられるのが「面(おもて)」です。一方、江戸時代まで能は、主として男性によって演じられていたため、若い男性の役などは「直面(ひためん)」といい、面をつけずに演じます。直面もまた役としての「面」であり、素顔そのものを見せているわけではありません。
舞台上で圧倒的な存在感を放つ面には、役柄にふさわしい表現を生み出すためのさまざまな技巧が凝らされています。その美しさは、美術工芸品としても高く評価されています。

「小面」は女性を表す面の中でも一番年若く美しい女性を表現している。 /能面 小面 伝是閑吉満作 桃山~江戸 16~17世紀 徳川美術館蔵
女性の嫉妬の悲しみと極限の怒りを表現した「般若」。 /能面 般若 焼印 「天下一是閑」朱漆花押 是閑吉満作 桃山~江戸時代 16~17世紀 徳川美術館蔵
「白式尉」は、長寿や吉祥を象徴する神聖な老人を表す。 /能面 白式尉 伝元休満総作 江戸時代 18世紀 徳川美術館蔵
みどころ2.一目で役柄を示す「装束」
能では、「面」と「能装束」の組み合わせによって役柄が表現されます。豪華な織物は鬼神や高貴な人物、質素な色合いは僧や老人を表すなど、文様や配色、形、素材の異なる能装束を組み合わせることで、観客は一目で役柄を見分けることができます。
代表的な能装束である「唐織(からおり)」は、色鮮やかな糸で草花文様を織り出した女性用の装束です。美しく舞う女性や天人には大きな袖が優雅に翻る「長絹(ちょうけん)」を、雄々しい鬼神や武士には力強い文様の「狩衣(かりぎぬ)」や「法被(はっぴ)」を合わせるなど、役柄に応じてさまざまな能装束が用いられます。

大きな袖が優雅な「長絹」。/黄地枝垂桜に尾長鳥文金襴長絹 江戸時代 17~18世紀 徳川美術館蔵
紅色の入った唐織は若い女性の役に用いる。/紅・白段簾に花の丸文唐織 江戸時代 18世紀 徳川美術館蔵
みどころ3.能の調べをつくる「四拍子(しびょうし)」
能では、「謡(うたい)」に加え、「囃子(はやし)」が音楽的要素を担っています。囃子は笛・小鼓(こつづみ)・大鼓(おおつづみ)・太鼓の四つの楽器で構成され、「四拍子」と呼ばれます。その編成は、ひな祭りの五人囃子と同じです。
囃子は伴奏だけでなく、場面の効果音としての役割も担います。甲高く響く笛の音、鼓や太鼓の力強い響き、そして奏者たちの掛け声が一体となり、能ならではの幽玄な世界をつくり出します。
会場では動画をご用意しておりますので、実際の音色と併せてお楽しみください。

能管 江戸時代 17~18世紀 徳川美術館蔵
夕顔蒔絵小鼓 黒漆銘 弥左衛門(花押) 江戸時代 18世紀 徳川美術館蔵
葡萄蒔絵大鼓 江戸時代 18~19世紀 徳川美術館蔵
若松・鶴蒔絵太鼓 江戸時代 19世紀 徳川美術館蔵

シテ方宝生流 能楽師 辰巳満次郎氏
記念講座「お能、はじめまして。入門編」「シテ方宝生流」の能楽師として活躍する辰巳満次郎氏を講師に招き、企画展に合わせてお能の世界を楽しくお話いただくと共に、舞台で実際に使用しているお道具の紹介や、実演をしていただきます。
日時:2026年6月28日(日) 13:30~15:00(開場13:00)
定員:90名(予約制)※定員に達したため、受付終了
会場:徳川美術館 講堂
受講料:2,000円(入館料は別途必要)

徳川美術館
〒461-0023 名古屋市東区徳川町1017
電 話:052-935-6262(月曜日を除く10:00~17:00)
■アクセス
・JR中央本線「大曽根」駅下車、南口より徒歩8分
・市バス・名鉄バス 基幹2系統「徳川園新出来」下車、徒歩3分
・名古屋観光ルートバスメーグル「徳川園・徳川美術館・蓬左文庫」下車すぐ
・美術館南側に無料駐車場17台あり
■開館時間と休館日
10:00~17:00(最終入館15:30)
月曜日は休館(祝日の場合は直後の平日)
■公式ホームページ
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